えむ

オペラ座の怪人のえむのレビュー・感想・評価

オペラ座の怪人(2004年製作の映画)
3.8
言わずと知れたミュージカル『オペラ座の怪人』、映画版。
WOWOWでミュージカル映画特集してたついてにレビュー加えておきます。

そもそもガストン・ルルーの小説が原作ですが、この映画の場合はミュージカル版のストーリーと音楽を淘汰しているので、それを原作と言っちゃって差し支えないと思います。

確か、これの公開当時は、ジェラルド・バトラーがファントム(怪人)ってどうなのと賛否両論だったはず。

というのは、ファントム役は楽曲の難易度が高くて、舞台の場合、日本なら芸大出のテノールとか、海外でも歌自慢の方がキャスティングされる枠なので、この前後に筋肉ムキムキで血みどろの兵士をやってたような俳優が、あのファントム務まるんかい、って感じだった訳です。

でも作品全体通して、シャンデリア落下とか絢爛な舞台場面は、映像だとかなり迫力も増すし、文句無しに美しい。


ジェラルド・バトラーのファントムは、洗練された舞台版の拗らせファントムと比較すると、泥臭く、人間臭くて、怒りに満ちた人物だなあという印象ですね。

ファントムという人の出自には相当に虐げられた過去があるので(小説原作は特に)、まあそれはそれでアリかな、と。

歌唱法の違いもあって、楽曲もよりロック色が強く出てますし、男くささとか色気のようなものはある。
クリスティーヌに芸術を語るには、ちょっとドスンとしすぎてるけども。笑。

あと、これは美的感覚と自分の好みの問題ですが、舞台でも映画でも、大抵メグ・ジリー役の女の子の方が、可愛らしいことの方が多くて、つい肩入れしちゃう。なんでこの子こんなに報われないのかしら良い子なのに…って。

クリスティーヌは、可憐で音楽の天使を信じてて、お父さんが大好き、歌は1級品、なんだけど、なんだかんだその大人びた歌のせいなのか、ちょっとキュートさが薄れてしまうのよ…イマイチ可愛く感じません。
そして、ええとこのボンボン、ラウルをしれっと選んじゃうとがね…若いね…

それに、やり方はかなり酷いし歪んでるものの、クリスティーヌへの想いと執着は、やはりラウルよりファントムが強いと思うので、ラストはちょっと可哀想な気になるんですよね。
時間をかけて育てたのに、ポッと横からでてきたイケメン金持ちボンボンにかっさらわれるオジサンの悲哀…

そう思ってしまう人が多いのか、若く勢いでラウル青年を選んだその結果は、この作品の続編というべき『ラブ・ネバー・ダイ』で妙にリアルに描かれてますので、気になった方はぜひそちらもどうぞ。
ちなみにそっちは二次創作であってルルーの原作ではないですけど。

(映画ではないけど、舞台DVDで出てますよ
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