Stella

劇場のStellaのネタバレレビュー・内容・結末

劇場(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

物作りや夢を追いかけた経験をした人やそれを支えた人に刺さる話。

劇作家として劇団を仲間と立ち上げ、成せないままに、転がり込んでから一緒に住んでる家の家賃も払わず、言葉だけは偉そうで、何かを抱えながら、行動もせず、日々を生き続ける繊細な主人公と、やりたい事をそれぞれ追いかけていたはずが、気づくと支える側に徹していて、疎かにされながらも支え続けていく沙希。永田は、はじめのうち、天真爛漫な彼女に惹かれるのにその彼女の笑顔を奪うのは結局、自分。1番好きな人を不幸にしていく。

2人とも依存し合いながら、お互いをダメにしていくのとか、周りから見たら、何で?と思われたり、滑稽だったり、そんな人と付き合ってる人の気が知れないし、そっち側には行きたくないだろうけど、そうなってしまう人は一定数いる。人間って万能じゃないし。ラストシーンは涙が零れた。

憧れられるような2人では無いし、本当にダメでクズ男だけど、それは芸術的に成功する人と紙一重なんじゃないかな。自分の居場所がこんなとこじゃないとか、世の中から過小評価されていると日頃感じている人は周りの才能や成功している人たちに強く嫉妬する。そして、周りと比べて、自己肯定感も下がるし、束縛も激しくなる。

山崎賢人さんのダメ男、やさぐれ感はぴったりでしたが、怒る部分はきっとご本人が穏やかな方なんでしょうね。というのが伺える怒り方だった気がする。今一歩、入り込める演技だったらもっとよかったな。

松岡茉優さんはほんとによかった。沙希が、相手と喧嘩にならないように気を使って、いつも明るく寄り添う姿とか、それが積もり積もって、表情が無くなって笑えなくなったり、叫んだり、お酒に溺れて壊れていく感じがリアルだった。

"なんで(俺に対して)もっと気が使えないのかなぁ?"ってセリフはモラハラ男あるあるだと思います。自分が繊細すぎるのに、周りに気遣ってもらいたがるんだよな〜。そして、相手に非があるような言い方をするから、相手が素直であればあるほど病んでいく。


変わらない彼と変わっていく沙希、2人は出会ったけど、未来は離れていく。

恋の始まりは純粋な感じだったし、2人ともいつかは、いつかはってきっと考えてたと思うし、そのいつかが来る人と来ない人がいるのも世間では当たり前の現実。

それに、こういう人たちは離れて自分のことに没頭した方が上手くいったりする。依存症だから、依存しないようにするには出来ないところに身を置いたり、自分の弱さと向き合わなければならない。アーティストとはどこかで孤独なもので、孤独に耐えられないから、相手を求めるけれど、結局、その溝は他の誰にも埋められなくて、自分で埋めるものだと思う。それに気づけた人は強い。

伊藤沙莉ちゃんがなんかkey personっぽくて好きだった。あと、あの人king gnuの人よね。
Stella

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