TakahisaHarada

シャン・チー/テン・リングスの伝説のTakahisaHaradaのレビュー・感想・評価

4.1
MCU初アジア系ヒーローのオリジン。過去のMCU作品にはなかった、父子の決別であり継承でもあるというストーリー展開が好きだった。

前半はバスの格闘シーン、ビル外壁の足場での格闘シーンがめちゃかっこよくて熱い。魔法やテクノロジー、超能力も派手で良いけど打撃音がバシバシ入った格闘のかっこよさ、興奮には及ばないなと思わされる。
後半(ター・ロー以降)は全然想像してなかったファンタジーかつ神話的な展開。「フロム・ダスク・ティル・ドーン」ほど露骨ではないけどけっこう驚きのジャンル転換って感じだった。アスガルドとか、過去にも神話的な話はあったのですんなり飲み込めたけど、前半が良かっただけに後半何となく乗りきれない感はあった。ゴジラvsムートーの逆パターン(吸い出し)か?って感じの龍vs悪魔は良かった。

スターク家、ワカンダ王国、アスガルドとか、過去MCUで描かれてきた父子の対立、確執みたいな物語とはまた一味違う展開なのも良かった。父子の直接対決が描かれるという意味ではGotGのヨンドゥ(クイルの育ての親)が近いかも。
トニー・レオンが「彼は歴史ある男で、愛されることを切望している」と語っている通り、父ウェンウーは彼自身の歴史ゆえに歪んだ愛情を子に押し付けてしまう親だった(我が子に強さを求め、殺し屋に仕立て上げてしまう)。シャン・チーが、直感と本能に従う少年期にはがむしゃらに父についていくも、社会性を身に付ける年頃になると次第に疑問を抱くようになる、というところもリアルだったなと思う。
ウェンウーが妻の声にあそこまで執着していたのは、家族の崩壊は自身の歪んだ愛情ではなく妻の死がもたらしたものだと思っているからで、妻を取り戻すことでまた家族と幸せな日常を取り戻そうとしている。「権力に取りつかれた人間」とか、「歪んだ愛情を押し付ける親」とか、単なるダメなやつとしては切り捨てることができない、とても切ないキャラクターだなと思った。
他に思い出したのは「万引き家族」の治と祥太の関係で、ウェンウーも治も子に求められる父になれなかったというところが共通。ウェンウーがテン・リングスをシャン・チーに託すシーンでは、治の「とうちゃんさ、おじさんに戻るよ」という台詞が聞こえてくるぐらいの勢い…笑 本作の場合は最後の最後に父から息子への継承を果たしているから全然救いのある展開ではあったけど。

ケイティのキャラクターとか笑える要素もちゃんとあって良い。ポストクレジットのカラオケの天丼(ウォン付き)めちゃ笑った。「ホテル・カリフォルニア」の話が活きてきたり、駐車係であることがちゃんと活きてくる展開も良かった。
「アイアンマン3」以来のトレヴァー・スラッタリーも笑える。
監督がドラゴンボールのファンらしく、視覚的にインスピレーションを受けてるらしい。より直接的なところで「かめはめ波」はあったけど、視覚的にはどの辺りがドラゴンボールの影響を受けたシーンだったのか気になる。