ぱいじ

ソー:ラブ&サンダーのぱいじのネタバレレビュー・内容・結末

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

なるほどねぇ。4作目はそういう感じなのか。ソーのファンとしては色々書きたいけど全部書いてるとキリがないので絞ります。(MCU全て視聴済み)

○タイカ・ワイティティ監督、前作から思ってたけど演出のセンスが最高すぎる。特に音楽との合わせ方。前作ではimmigrant song、今作では私も大ファンのガンズを全面に出してくれていて、大満足。
○そして、ソー作品の特徴の一つ、序盤の戦闘シーンでの大活躍。「考察?マルチバース?小ネタ?うるせえ、そんなのどうでもいいからとにかく最強主人公の無双シーンがありゃいいんだよ!」と言わんばかりに、最近のMCUでは少なくなってしまった単純明快な戦闘シーンを、スタイリッシュな画で見せてくれる。ソーというキャラクターとこの天才的な監督だからこそなせる技だ。最高。ひねりのない王道が、逆に痺れる。神殿?んなもん壊れていいんだよ、大事なのは場所じゃなくて人だから←
○さて、演出面に関しては上記の通り天才的でテンポも良いため満点なのだが、正直に言うとストーリーはあまり面白くなかった。なんというか、これは自分が最近のMCUのあまりにインフレの激しい世界観に慣れすぎていることも原因なのだが、話としては「割とどうでもいい」。
○もちろん、レディ・ソーの誕生、ギリシャ神話の神々の存在、ヴァルハラの登場といったように、ソーならではの方法でMCU世界の広がりを見せてくれている点は相変わらず面白い。随所にチョイ写りするセレスティアルズについても、今後どのように物語に絡んでいくのか気になる。
○しかし、大変申し訳無いが、ソーの戦闘シーン以外で全く感動することができなかった。ジェーン・フォスターを最後に見たのが何年前か覚えていないレベルだし、流石に登場と退場のさせ方が雑すぎて、ああここで過去キャラをキレイな形で処理したかったんだろうなという脚本の裏事情がどうしても頭をかすめてしまうのだ。
○が、本作ではタイトルにもある通りまさに色々な愛の形が示されており、ソーとジェーンの間の愛にあまり興味が湧かなくても問題ない。同性愛者で今は愛を欲していないヴァルキリー、性別という概念があるのかも不明な種族で相手を見つけたコーグ、愛する娘を失ったゴア、そしてそのゴアの娘とともに暮らす事を誓ったソー(更には、ムジョルニア、ストームブレイカー、ジェーン、ソーという恐ろしく奇妙な愛の四角形もユーモラスに描かれる)。愛を広義で捉えれば、ジェーンを回復させることを「永久」に約束させることもできたはずなのにもかかわらずゴアに願いを叶えさせたソーは、ゴアに対しても「愛を喪失した者同士」として、友愛の念を抱いていたと言える(これは冒頭のクイルとの間の友情にも通じる)。ジェーンはムジョルニアから既にもう一度命を与えられていたので、さらなるチャンスはもう一人に与えたと解釈することもできる。また、ソー・ヴァルキリー・ジェーンは誰ひとりとして実の子を持たないにもかかわらず、父・母世代として他人の子供を救うという、これまた広い意味での愛と言えよう。
○この「様々な愛の形」はエターナルズでも描かれており、正直ポリコレ対策というか、これまた脚本の裏事情が見え透いて仕方ないのだが、まあヒーロー、しかも人間を愛する神様なのだから良しとしよう。それが本作のテーマだし。
○そもそもこの「愛」というテーマは映画の世界で最も多く取り上げられてきたものであろうから、メインテーマに出されてもあまり刺激にならないのだが、それを真正面から「多彩に」描いた本作は、小難しいことを考えずに楽しめる、それでいて現代にうまくマッチした良作といったところだろう。個人的にはアスガルドは場所ではなく人という前作のテーマの方が刺さった、というか、本作は特にメッセージ性がある類の作品ではない。