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ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコのfaeriefilmieのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

10代の頃から知るルイス・ウェインと彼の作品。わたしはルイスは統合失調症の治療の一環(絵画療法)として絵を描き続けていたのだと思っていた。だけど彼は病気になってからも家族のためにとにかく働き続けていただけの作品が、統合失調症患者が描いた絵として世に出回っていることを知った。

舞台は19世紀イギリス。庶民のエミリーは貴族のルイスよりも10歳年上らしく、当時のイギリスではいろいろと問題視されることばかりの結婚だったらしい。しかしそんなことよりもルイスの5人の妹達が一向に家から出て行かず、兄に頼りっぱなしの光景の方が奇妙に思えた。女の人は働き口がない時代なのかもしれないけど、5人とも嫁ぎ先がないというのは一体どういうことなのだろう?

妹達はルイスとエミリーの結婚が曰く付きであーだこーだ騒いでいたが、エミリーと恋仲になる前からルイスの仲間達は「変な妹達」と話しており、映画では言うほど変には見えなかったけど実際かなり変なのかもしれないし、ただのブラコンにも見える。

一方のルイスはエミリーと出逢い、彼女が亡くなるまでの短い時間は、とても幻想的で理想的だった。エミリーとルイスが結ばれる時、きっかけになったのはエミリーのショールが青いねというルイスの言葉で、それからルイスとエミリーはずっと青色を大事にしていて、ああこれが愛なのだなと思った。

エミリーが亡くなり、悲しみに暮れる間もなく働き続けるルイスを見ていると、エミリーと過ごした時間が幻のように思えた。しかし船の中でこどもの頃から恐れる悪夢を見て、夢(妄想)と現実の区別がつかなくなり、こどものように泣いてしまうルイス。観劇の時はエミリーが助けてくれたけど、もう助けてくれる人はいないんだ、エミリーはいないんだ、ルイスは独りなんだと目の当たりにしてつらい気持ちになった。

妻を亡くし、猫を亡くし、母を亡くし、妹を亡くし、友を亡くし、心を病み、それでも働き続け、だけど状況は一向に好転せず、ぼろぼろの人生なのに、これ以上ないくらいハッピーエンドで涙。

猫がルイスを支え続け、犬がルイスを窮地から救う。犬の恩返しが猫で、猫の恩返しが犬のような映画だった。
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