よしまる

スミス都へ行くのよしまるのレビュー・感想・評価

スミス都へ行く(1939年製作の映画)
4.7
 WWⅡよりも前の時代、今から80年も昔の話。まだ写植で活版印刷しかない頃と、良くも悪くも情報は瞬時に運ばれSNSで世界が動いてしまう現在、にも関わらずいかに何にも変わっていないかを思い知らされる映画。
 息子さんのフランクキャプラjrさんが、リメイクの話が何度も来たがこの普遍性の前には必要ないみたいなこと言っててなるほどと感じた。

 監督と生涯親友であり続けたジェームズスチュアートのまだ若かりし熱量がすごくて圧倒される。わざと薬で喉を腫らしてまで声を枯らして正義を叫ぶスミスには、開戦により各国で上映禁止になる直前まで世界中の人々が心を揺さぶられたそうだ。

 国家やマスコミはアメリカの恥を晒すと言って国内外での上映に反対したらしいのだけれど、自由と正義を高らかに謳ったこの映画は、国のお家事情や思想を超えて、誰の心にもまっすぐに届いた。アメリカの、リンカーンの思想を尊んだのだ。
だが、人の心には誰しもそういう想いがあるはずなのに、80年経っても世界は何一つ変わらず、この映画の価値は色褪せることがない。
 そのことに絶望するのか、希望を持つのか、それもまた人の心次第なのかもしれない。