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KCIA 南山の部長たちのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

1979年の朴正煕暗殺事件に基づき東亜日報論説委員の金忠植が書いたルポルタージュ、『実録KCIA―南山と呼ばれた男たち』(1992年)が原作。実在の人物名とは変えている。

おそらく意図的にだろうが、民衆の姿は一度も出てこない。舞台と人数を絞り、舞台劇のように演出されている。

暗殺犯であるKCIAの部長、キム・ギュピョンの視点から、暗殺に至るまでの経緯を描く。

パク大統領と、その数名の側近たち、キム・ギュピョンの前任者で、アメリカでパク大統領の不正を告発したパク・ヨンガク、その協力者デボラ・シムにのみ焦点を当て、市井に生きる人々の姿はほとんど出てこない。いかに彼らが民衆から離れて政治、あるいは利権の獲得をしていたかを表すための演出ではないか。

大統領の裏金作りを手伝っていた謎の人物イアーゴの正体とは誰かを巡るミステリー仕立てにもなっている。彼の正体が明らかになるとき、それがのちに軍事政権を再び始めた人物、チョン・ドファン(全斗煥)だと判明する。この現実とのリンクにゾクゾクした。イアーゴーの件でキム部長に疑心暗鬼を抱かせたことで暗殺の原因の一端となり、キム部長の革命への思いとは裏腹に、漁夫の利のような形で大統領になった人物が、何を隠そうチョン・ドファン、という仮説を、この作品は立てている。

「キム部長が大統領暗殺後に、陸軍ではなく中央情報院へ向かっていたらどうなっていたか」という想像をせずにはいられない。

それにしても食事の美味しそうな映画だ。
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