sally

おもかげのsallyのレビュー・感想・評価

おもかげ(2019年製作の映画)
5.0
波の音のように
いつまでも静かに響き渡る
海のように果てしなく深い喪失感
赦しと光を与えてくれた
愛する息子のおもかげを宿した少年
ひと夏の恋にも似た
形を成さない確かな愛

もう、心配することは何もない。

あなたはひとりじゃない、
わたしもひとりじゃない。

ワンカットの電話で繰り広げられる冒頭のシーンは、緊迫感あふれるサスペンスのよう。

過去を遠ざけるため、ほとんど使わない携帯電話。次第にジャンからの電話が増え、携帯電話を頻繁にチェックするようになるのは、少しずつ傷を受け入れて乗り越えていく過程なのだと感じた。

「結婚して」
勢いまかせの本当の言葉が胸に沈んでいく。共に生きられなくても、光の方へと導く愛は確かにある。

多くを語らないし、明確な結末も描かれない。この先を想像し描くのはわたしたちなのだ。

消えない過去を抱えて、不確かな未来を生きるための決断と選択。

穏やかな波の音と、どこまでも広がる海がすべてを包み込む。
繰り返される悪夢のような記憶が、少しずつ癒されていくのを感じた。
生きていれば、どんなに小さくても希望がある。
前に進むのは忘れることじゃない、自分の一部として受け入れていくことなのだと思う。

「大丈夫?」
という台詞が何度も出てくる。
大丈夫ではないのに、大丈夫だと無意識に言い聞かせてきたエレナが、本当の意味で大丈夫になったラストシーンがとても良かった。

本当に素晴らしくて、1日経っても余韻が消えない。

愛する息子のおもかげを見る。
神様の悪戯、あるいは救い。
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