みかぽん

異端の鳥のみかぽんのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.1
凄いものを見せられて放心、がまさに直後の感想。そしてここへレビューを書く理由に関係なく、直後から翌日に至ってもこの物語について考え続け、単純に「あぁ面白かった」の感想の先に記憶から消える作品とは全く違う、逆に一夜明けた日から評価を上げて行くスーパー重量級の作品だった。。


物語の結末を記すので、以下はご注意を!
↓↓


時は第二次世界大戦。ソ連とドイツに挟まれた小国&田舎と思しき場所。
親族宅に疎開しながら父母の迎えを待つ少年だったが、ある日突然、保護者の年寄りを亡くす。
そして放浪を余儀なくされた行先は、まさに究極のブラック企業ばりの地獄巡り。

生きるために自分をその場に添わせて踏ん張るが、それを今の世に当てはめれば、詐欺師の片棒担ぎ、自身に向けられた性的搾取、ヤクザの子分など(=実際には軍の小隊に拾われるのだが、そこでは半沢直樹宜しく?やられたらやり返すの倍返し戦略を伝授され、別れ際には餞別代わりにピストル付与…って平時ならもろヤクザ😭)。

とにかく行く先々で、私自身も〝今度こそは前よりマシな場所を…〟を期待するが、その裏切られ方は毎度想像を軽く超え、唯一現れる善意の司祭も、司祭本人の意思に関係なく運命自体が味方せずで。なので少年自身、そんな人生に全く期待をしなくなる(いちいちそれをアテにしていたら、裏切られるばかりで生きては行けない💧)。
そして彼はもはや冒頭でペットのフェレットを奪われ、惨殺された怖れと悲しみに泣き崩れる無垢な少年ではなく、表情のない瞳と、しかし全身から凄みを発する異様な子供に変わっていた。

それはまさにエピソード中にあった白いペンキの小鳥よろしく、〝異端の鳥〟はそこに居るのでなく、愚かな人間に塗り替えられた異質な姿に成り果てたのだ…。
(事実、最後に収容された孤児院でも、別の子供たちは虐めやすい相手を見分けて憂さを晴らすが、彼に対してはまるで一瞬に優劣を下す動物のようにその目前で固まり、立ちつくすばかりだ)

この施設で少年は自分を探す父親との再会を果たす。
父は少年を抱き寄せ、仕方がなかったんだ、許してくれ、と震えながら涙する。
そして我々は、少年を連れ、彼の母親が待つ故郷へ向かうバスの中、転寝する父の腕に刻まれた識別番号に、少年が父母と別れた真の理由と戦争の終結を知る。

日の当たるのどかな田舎道をゆっくり走る小さなバス。車窓をみつめ、自分の名を曇りガラスに記す少年のその一点に於いて私は、今まで自身を削り続け、これを失った少年の再生の糸口として見出し、ただただ祈ることしか出来なかった。
みかぽん

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