2019年上映、ノア・バームバック脚本・監督のアメリカ映画
「パターソン」のアダム・ドライバーに魅せられて鑑賞。「ブラック・クランズマン」「ハウス・オブ・グッチ」などでアダムの作品は観ていたが、また違ったイメージのアダム・ドライバー。演技の幅が広くて色々な役をこなす才能は凄いと感じた。
「ジョジョ・ラビット」のお母さん、スカーレット・ヨハンソンも体当たりの演技。
離婚というテーマはなかなか難しい。至って個人的な問題なのだ。観ている方は、一体離婚しなくてはいけない本当の理由は何?と思ってしまう。お互いの気持ちが複雑に絡み合っていて、収拾がつかなくなっているのだからなかなか円満には片付かないものなのだろう。
この作品は、子供を持つ夫婦の離婚プロセスを描いている。リアルで辛辣ではあるけれど、笑いもあり、温かい。アメリカの中でも州によって法律が微妙に違い、弁護士をたてるのも大変そう。そういうお国事情も知ることができた。一枚の紙を提出するだけでは終わらない手続きの中で、それぞれの感情がエスカレートしていく様子。
二人のいいところをそれぞれ紙に書いて提出するところから始まる。今別れようとしているカップルとは思えない、相手の長所を綴る温かい言葉。まだ愛情があるのではないか?それなら何故別れるの?周りの人には理解出来ない二人の不満の積み重ねが、こじれにこじれていくのが手にとるようにわかる。弁護士の介入でドンドン泥沼化していく。
罵倒し合う二人の姿が悲しい。心にもない言葉を発して涙するほどなのに。離婚というのは、本当にエネルギーがいるなとつくづく感じるシーンだった。
離婚したいと言っていても、ハグしたり、キスしたり、髪の毛切ってあげたり、子供を大切に思って子供の前では言い争いをしない、そんな微かに残る愛情が二人の心を繋ぎ止めておけないのが何とも悲しい。
私を含め、何十年もの結婚生活をしていれば、誰にも何かしら問題は起きているだろう。それでも一緒に歳を重ねていけるのは幸せなことなのだ。
ラストは、温かく、靴紐を結んであげる優しい気遣いに別れても家族、ずっと愛していくだろうという彼女の気持ちがわかるようで、ちょっぴり切なくなった。