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ホモ・サピエンスの涙のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ホモ・サピエンスの涙(2019年製作の映画)
3.8
その気分もわからないでもないが、「ホモ・サピエンスの涙」とは、たいそうな邦題をつけたものだと感心している。ロイ・アンダーソン監督の前作「さよなら、人類」(2015年)からの発想だとは思うが、もともとのタイトルは「終わりなきものについて」(英題は「About Endlessness」)という意味のものらしい。オフビートな感じの33のシーンが、すべてワンカットの固定カメラで撮られた作品なのだが、それぞれのシーンにとくに物語的なつながりはない。ただシーンシーンで繰り広げられる、ややブラックな味わいのエピソードが次々と描かれていく。ひとつひとつのシーンは完全に構図や色彩などが設計され尽くしており、動く絵画を見ているような気分にもなる。

あまりにひとつひとつのエピソードが短いため、またそれが次々に展開されるため、作品としての全体像は掴みにくい。どちらかというと悲劇の部類に入るエピソードが多いのだが、そのオフビートな映像のリズムで、それほどペシミスティックにはならず、むしろ冷静に見つめることができる。監督もそのあたりを意図しているのだと思われるが、もう何回か、じっくりと配信などで観賞できたら、正しい作品へのジャッジもできるのではないかと思われる。
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