ぶみ

誰がハマーショルドを殺したかのぶみのレビュー・感想・評価

4.0
マッツ・ブリュガー監督、脚本、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、ベルギー製作によるドキュメンタリー。
1961年9月、国連事務総長ダグ・ハマーショルドの乗った飛行機が墜落、彼が死亡した事件を、ジャーナリストである監督のマッツ・ブリュガーと、調査員ヨーラン・ビョークダールが調査する姿を描く。
正直ハマーショルドの名は本作で初めて耳にしたため、当初は時代背景についていけるかどうか心配していたものの、全く問題なかったため、杞憂に終わることに。
映画はブリュガーがホテルの一室でタイピスト二人に語るスタイルで展開、その時系列が頻繁に前後するとともに、登場人物が入れ替わり立ち替わりで数多く登場するため、集中していないと、あっという間に置いてきぼりを食らうこととなるが、何とも言えない独特のテンポやシュールな演出、時折挿入される再現アニメ等々で最後まで飽きることはない。
何より、そのタイトルから、フーダニットものかと思いきや、次から次へと明かされる証言により、ハウダニット、ホワイダニットへと変化していった挙句、そんなことはどうでも良くなるようなスケールの大きな話に繋がっていく展開はサスペンスフル。
そして、そのスケールの大きさから、もはや監督と調査員の二人には手に負えなくなり、ボールを投げっぱなしとなってしまうのだが、それ故に、観終わると何が真実で何が虚構なのかの境界線が曖昧となり、実はそこが監督の狙いだったのでは、と気づくことに。
誰がハマーショルドを殺したかを発端とし、人間の主観や想像が入る以上、与えられた情報だけで真実に辿り着くことが、いかに困難なことかを思い知らされる秀作。

人は欲深い。
ぶみ

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