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マトリックス レザレクションズのlunesのレビュー・感想・評価

3.8
今作はまず導入部分として、過去の三部作に対するアイロニックなオマージュから始まる。
元々続編製作を行う気が無かった監督が、新作を生み出す重圧や苦悩、第1作公開から22年の間にファン達が勝手に生み出した「マトリックスはこうあるべき」という固定概念化されたイメージに辟易している様子が描かれている。

監督自身の心情を主人公に投影し、過去三部作をあえて『大ヒットしたゲームのストーリー」とすることで第三者的視点から検証を行いパロディに落とし込んでいる点が面白い。小道具にも小ネタが散りばめられているので探してみるのも良いだろう。

「バレットタイムだ」「リブートしたら売れる」
SNS等で飛び交う言葉をくだらないとぶった斬り、ワーナーにまで毒づく切れ味は見事だ。

登場人物のセリフからも分かるように、過去のマトリックス三部作は伝説や神話のように語られ、意図しない引用やテーマが世間を一人歩きしている。
そもそもマトリックスシリーズという作品は、アクションSF映画では無い。
哲学性、宗教性、アクションはあくまでツールだ。

マトリックスという作品は「支配からの解放」がテーマだ。

ネオとトリニティを復活させマトリックス(仮想世界)から解放し、マトリックスという映画そのものを本来のテーマへリザレクションしているのではないか。その点において今作は原点回帰であると同時に、過去の栄光に囚われない新時代のマトリックス作品である。

過去のマトリックスシリーズの延長戦を期待していた人は今作を見てがっかりしたはずだ。確かにアクションは物足りないし、クールでスタイリッシュな演出はどうみても減ってしまった。コメディ要素も加わりこれじゃ無い感は想像に難くない。
だが、監督に言わせれば観客すらも過去のマトリックス作品から解放されよということなのだろう。

新作マトリックスという作品をマーチャンダイズさせずに、新しい視点と価値観で描いた力作だ。
(2021/12/20)
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