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007/ノー・タイム・トゥ・ダイのlunesのレビュー・感想・評価

3.5
ダニエル・クレイグがボンドを演じる最後の作品。
コロナ禍の為に公開が1年以上も延期となってしまった。

『過去との決別』というテーマが、第1作カジノロワイヤルから今作までを叙情詩のように結びつけている。
ダニエル・クレイグが演じたボンドは自らの過去と向き合い、悲劇を乗り越え己の力で光を探すようなボンドであった。

シリーズ15年の集大成とも言える作品の監督を、サム・メンデスから引き継ぎ務めたキャリー・ジョージ・フクナガの重圧は想像に難く無いが、しっかりまとめたなという印象である。
過去作品へのオマージュもしっかりと取り入れているが、アクションシーンについてはシリーズの中でも最も地味。全体的にもっさりしていてボンドも年を重ねたなと思わされる。華麗かつ冷酷に任務をこなすスタイリッシュなボンドは今作では望めない。

DNAを駆使した最新生物兵器拡散を阻止するというストーリーは過去作と比べて少し突飛な設定であり、アメリカ系の超有名スパイ映画で扱いそうな題材である。
スペクターで終わらせても良かったのではという内容で蛇足の感が否めないが、フィナーレを飾る作品としては十分楽しめるのではないか。

その中でも目を惹いたのが、日系の血を引く監督だからなのだろうか、日本のランドクルーザーとイギリスのローバーのカーアクションがなんとも不思議な面白さがあった。
その他にも枯山水に土下座、能面などジャパニズムてんこ盛りである。

過去作品の鑑賞は必須。
今作だけ観ても連綿と続くストーリーは全く理解できないだろう。
過去作全てを鑑賞した後に、カジノロワイヤルで自らの愛を殺しエージェントとなったボンドの最期をぜひ見届けて欲しい。(2021/10/1)
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