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マザーレス・ブルックリンのn0701のネタバレレビュー・内容・結末

マザーレス・ブルックリン(2019年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

私立探偵でトゥレット症候群の男はボスの取り引きに付き添っていた。ボスは誰かと何らかの取り引きをしており、連れ去られ、腹部を撃たれて殺される。

物語の中心かつ最大の謎はボスが何を解明し、何を取り引きしたのかということだ。

結論から言うと、政治家でありブルックリンを大幅に改革していた男のスキャンダルを掴み、金を強請っていたのだ。政治家の男モーゼスは、その権力を如何なく発揮し、黒人の住まいを「スラム」と位置づけ、次々に排除していった。それには理由があった。

モーゼスは政治家として経歴を重ねる中で、偶然宿泊していたホテルで勤務する黒人の女性をレイプしたのだ。その結果、黒人の女は子どもを身籠ることになる。

その女性が物語の中心的なキーマンとなる。
私立探偵の男は、ボスが男たちに囲まれて「なぜあの黒人女を調べていた?」と聞かれているのを聞いていた。
その黒人女を探して辿り着いたのがこの女性であった。

その女性はモーゼスの政治改革に反対するメンバーの一人であり、市民で構成される政治集会に参加してはモーゼスを批判していた。
そして、その中にもう一人のキーマンである初老の男性と探偵は出会う。その男はモーゼスの集会に出ては彼を批判していた。

さて、物語として「どんでん返し」に当たるのは次の3点だ。

まず、黒人女の父は実はモーゼスであり、黒人女の父だと思われていた黒人男は彼女とは何ら関係がないこと。
さらに、集会でモーゼスを批判していた初老の男は実はモーゼスの兄であること。さらに、黒人女の書類上の父はモーゼスの兄であることだ。

このミスリードが物語の根幹的な部分であり、私立探偵のボスが気が付いたモーゼスと黒人女の秘密なのである。

さて、モーゼスと対峙した私立探偵の男は黒人女の安全と引き換えに真実を聞く。つまり、モーゼスの過去の性犯罪と黒人女という存在だ。

だが私立探偵は調べたすべての情報をまとめて、かつて入手した新聞記者の名刺あてに情報を流す。私立探偵はその名刺を頼りに情報収集していたからだ。こうして真実はすべて新聞社に委ねられることとなり、選挙当日を迎えることとなる。



さて、物語として結構シンプルだったのではないかと思う。政治家の性犯罪と権力的な都市開発を巡る過去と現在の事件が暴かれるというものだ。そこに、記者ではなく、障害のある私立探偵が切り込むというところに物語としての独自性があり、ミスリードを誘う構造や豪華な俳優陣が脇を飾っている。

とはいえ、物語そのものがシンプルであり随所に登場するトゥレット症候群が物語と裏腹に雑音そのものだったようにも思う。だがそれがないとただの探偵物だし。面白くはあるが、もう少し驚愕なラストが欲しかった。
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