回想シーンでご飯3杯いける

ワンダーウォール 劇場版の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ワンダーウォール 劇場版(2019年製作の映画)
4.0
これも「ロマンスドール」と同じで、ちょっとだけ「おっぱい」映画。京都大学の吉田寮立ち退き問題を題材にした作品で、ドキュメンタリー風だが、名称等は架空のものに置き換えられ、あくまでフィクションとして仕上げられている。元々はNHK京都放送局のドラマとして作られたものを劇場用に編集したらしく、手法も経緯も阪神大震災を題材にした「その街のこども」に近い。脚本も同じく渡辺あやが担当している。

吉田寮と言えば湯浅政明監督の「四畳半神話大系」でも映像の素材として使用されたが、本作のロケはご当地ではなく、廃校に作ったセットなのだそう。実際の吉田寮よりは幾分綺麗に見える。

大学側から突然退去を言い渡された学生達の反対運動を描くと同時に、学生達の寮に対する思いや、同居者達との連携あるいは対立も浮き彫りにする。大学の事務所にある日突然設置されたガラスの壁「ワンダーウォール。その向こうに立っていたのは、おっぱいが魅力的な女性事務員だった。立ち退き反対派のリーダー格だった男子学生が、彼女と目線があった直後から最前線を退いてしまう。その理由は一体何だったのか?

ちょっとしたユーモアと、青春の行き場の無い衝動、京都学生街の風情が結実した、ローカルTV局の良心の塊のような作品。