Dick

2人のローマ教皇のDickのレビュー・感想・評価

2人のローマ教皇(2019年製作の映画)
5.0
❶Inspired true events.

➋マッチング:消化良好。

➌2人のローマ教皇の実話から触発された物語。
①第265代ベネディクト16世/ヨーゼフ・アロイス・ラッツィンガー(在位: 2005年4月 - 2013年2月)(アンソニー・ホプキンス):保守派。【以下ベネディクトと呼称】
②第266代フランシスコ/ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ(在位: 2013年3月 - )(ジョナサン・プライス):改革派。【以下フランシスコと呼称】
★ご本人が先月(2019/11)、ローマ教皇として38年ぶりに来日されたことは記憶に新しい。

❹舞台は2005年のブエノスアイレスから始まり、2014年のバチカンで終わる。

❺本作の基本は、「対立・和解・協調」にあると思う。

❻性格とポリシーが正反対の2人がコンクラーヴェでローマ教皇に選ばれる様子が、実に興味深かった。

❼最大の見所は、719年ぶりに自由な意思によって教皇を退位し、名誉教皇となることを決意したベネディクトが、いわば最大の敵であったフランシスコを後継者に選ぶ過程にあり、アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスという名優2人の名演の賜物と言える。

❽先日発表されたゴールデン・グローブ賞で、作品賞、主演男優賞(ジョナサン・プライス)、助演男優賞(アンソニー・ホプキンス)の3部門にノミネートされているが当然と思う。

❾フランシスコは保守的なベネディクト体制についていけず、辞職を願い出るが、ベネディクトは現体制への批判と受け取られると許可しない。それに関わる対話と議論を通じて、2人はお互いを理解し、相手に自分にない長所があることを認識していくのである。
①当初フランシスコは、教皇就任を固辞していた。彼には生涯忘れることの出来ない苦い記憶があった。フランシスコがイエズス会のアルゼンチン管区長であった1976年当時のアルゼンチンは、絶対的な軍事政権下にあり、反対する多くの人々が弾圧され、3万人の市民が命を落とした。市民活動に協力していたイエズス会の2人の司祭も、捕らえられ拷問された。フランシスコは、この2人を庇護出来なかったとして、責任を問われたのである。フランシスコは、政権の責任者に面会して釈放を頼む等、当時置かれた状況で出来得る限りのことをやったのだが、後ろめたさは免れなかった。
②ベネディクトはそんなフランシスコの事情を知っていた。(教皇庁には、要人情報のデータベースが整っていることを本作で知った)。その上でフランシスコを選んだのである。「葛藤があってもいい、罪があってもいい、大切なことはそれから逃げないことだ。」と。
③一方、ベネディクトにも人に言えない心の傷があり、それをフランシスコに告白(告解)する。
④そして、2人はお互いを許すのである。罪を犯さない人間なんてどこにもいない。そのことを一番知っているのは神なのだ。

❿カトリック教会のローマ司教にして、全世界のカトリック教徒の精神的指導者であるローマ教皇と言えども、楽しみ、悲しみ、悩み、苦しみ、欲望等の人間としての感情がある。時には、愚痴をこぼしたり、ふざけたりもする。そして、成功もあれば失敗もある。そういう人間として当たり前のことが本作では飾ることなしに描かれているので、心からの親しみを感じた。

⓫ラストシーンは、2014年のバチカン。好好爺が2人だけでサッカーのTV実況を見ている。リオで行われているワールドカップの決勝戦である。対戦は、ベネディクトの母国ドイツと、フランシスコの母国アルゼンチン。贔屓チームが攻勢に出ると歓声をあげて喜ぶ2人。いやあ、実に微笑ましい。勝負はドイツの優勝となったが、2人の間にわだかまりはない。2人の信頼と友情は終生変わらないと確信した。

⓬またまたNetflixオリジナル映画から傑作が誕生した。それ自体は喜ばしいが、一般の映画館の大半で上映されないことが惜しまれる。東海地方では、イオンシネマ名古屋茶屋1館で、12/13~26の2週間のみの限定上映である。
名演小劇場では新春から、『キング』、『アイリッシュマン』、『マリッジ・ストーリー』等のNetflix作品のアンコール上映が予定されているが、このような機会をもっと増やして欲しいと願う。

⓭トリビア:ローマ法王(教皇)や枢機卿がメインキャラとなった映画。

①『ローマ法王になる日まで(2015伊)Chiamatemi Francesco - Il Papa della gente』(監督:ダニエーレ・ルケッティ):
第266代ローマ法王フランシスコの激動の人生を事実に基づき映画化。ブエノスアイレスでイタリア移民の子として生まれたベルゴリオは、20歳のときイエズス会に入会。35歳の若さでアルゼンチン管区長に任命されるが、軍事独裁政権の足音が近づいていた。監督・原案・脚本は、「我らの生活」のダニエーレ・ルケッティ。出演は、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のロドリゴ・デ・ラ・セルナ、「グロリアの青春」のセルヒオ・エルナンデス。(KINENOTE)
★日本初公開は2017/6だが、法王フランシスコの来日(2019年11月23~26日)を記念して、2019/11全国でアンコール上映された。

②『ローマ法王の休日(2011伊)Habemus Papam』(監督:ナンニ・モレッティ。主演:ミシェル・ピッコリ):
選出されたくないという願いもむなしく選ばれてしまった新しいローマ法王が、大観衆へ向けた就任演説直前にローマの街に逃げ出すハートウォーミングなコメディ。監督・脚本は「息子の部屋」でカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルム・ドールを獲得したナンニ・モレッティ。本作に出演もしている。「昼顔」「ここに幸あり」などで知られるフランスの名優ミシェル・ピッコリが、逃げた先のローマで街の人々や彼らの真心などに触れて自らの存在意義を見出していく新法王をチャーミングに演じる。(KINENOTE)

③『天使と悪魔(2009米)』(監督:ロン・ハワード。出演:トム・ハンクス、ユアン・マクレガー):
教皇選挙(コンクラーベ)が行われるヴァチカンを舞台に、宗教と科学の数百年にわたる対立の歴史が招いた恐るべき陰謀の阻止に奔走する宗教象徴学者ロバート・ラングドンの活躍をサスペンスフルかつダイナミックに綴る。(allcinema)

④『栄光の座(1968米)The Shoes of the Fisherman』(監督:マイケル・アンダーソン。出演:アンソニー・クイン、ローレンス・オリヴィエ):
モーリス・L・ウェストの同名小説を、「慕情」のジョン・パトリックと「暴力のメロディー」のジェームズ・ケナウェイが脚色、「さらばベルリンの灯」のマイケル・アンダーソンが監督したローマ法王を主人公にした物語。(KINENOTE)

⑤『枢機卿(1962米)The Cardinal』(監督:オットー・プレミンジャー。出演:トム・トライオン、キャロル・リンレイ、ロミー・シュナイダー):
若いカソリック神父が、妹の不幸な死をきっかけに教区を去る。各地を転々としながら、彼は社会の矛盾と戦い続け、ついには“枢機卿”となるが……。若い神父の苦悩と遍歴を描いたヒューマン・ドラマ。主人公のモデルは、カトリック教会のニューヨーク大司教であり、教皇ピウス12世の枢機卿だったフランシス・スペルマンである。またこの映画に対するバチカン側の渉外担当責任者は、後の教皇ベネディクト16世、ヨーゼフ・ラッツィンガーである。内容は、法王庁の姿勢・行動に対する当時の大きな3つの疑問(恣意的人事、米国南部黒人差別への姿勢、ナチに対する姿勢)に対する法王庁側からみた回答にもなっている。第21回GG作品賞、助演男優賞(ジョン・ヒューストン)受賞。(Wikipedia)
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