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2人のローマ教皇のyksijokiのレビュー・感想・評価

2人のローマ教皇(2019年製作の映画)
3.8
変化と妥協。世の流れの変化の中でカトリック教の在り方にも変化の潮目が訪れる。特に性的虐待や同性愛。人種差別といったものから目を背けることは許されざるものになりつつある。困窮するカトリックの中でベネディクト教皇が選んだ変化をベルゴリオ枢機卿との対話を中心に描いている。

シンプルな作りの中でベネディクトや現体制への批判的な思想を明らかにしながら辞職の意を伝えるベルゴリオと、孤独で頑固さを覗かせるベネディクト教皇の噛み合わせの悪い会話が続いていく。ヤキモキさせられながらも二人の考え方と過去というものが少しずつ明らかになっていく。

個人的にはベルゴリオが「心を込めてパスを回せ」と話すシーンが印象的だった。大司教だからって神の声が人より聞こえるわけではない。無関心でいる限りは無関心でいる皆に責任がある。だからこそ想いを持って味方にパスを回せと。一人で抱え込むのではなく責任を分解して共有するのであると。この考え方が非常にグサッと来た。これは妥協ではなく変化なのだと。その一方で責任を一人で背負ったベネディクト教皇は「君は神ではない。人間だ。そしてあそこにいる神もまた人だ。」と話す。神の声を求めて祈り続けた二人の聖職者が辿り着いた結論と変化に感銘を受けた。

非常にシンプルな作りの中で演出も俳優たちの演技に委ねつつ、ドキュメンタリーなんじゃないかというぐらいにリアリティのある教会の中での映像の数々が素晴らしかった。

ご飯は一人で食べると頑なに表明していたベネディクト教皇が終盤でピザをテイクアウトしてベルゴリオと二人で食べるシーンが好き。祈りの途中で食べ始めようとしちゃうベルゴリオもナイス。

社長とか総理とか教皇とか、いろいろな責任を背負って生きる人たちはやはり孤独で極めて世俗から離れた存在だと思われがち。晒されて生きてることの辛さがある。でも社長だってお昼にハンバーガー食べるし教皇だってサッカー観ながらビール飲んだりピザをガツガツ食ったりする。なぜなら人間だから。

最初の二人の対話シーンの鳥の声とかホーンの音とかの音楽のチョイスも、教会の映像もすごく良かったからいいスクリーンで見たらもっと印象的だったと思う。。残念。
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