スズキ

i-新聞記者ドキュメント-のスズキのレビュー・感想・評価

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官房長官の記者会見で質問妨害を受ける東京新聞望月記者を追ったドキュメンタリー。

これまで見てきた森達也の作品の中で一番面白くなかった。

これが何の映画なのか分からなかった。
最後にいつもの「自分の頭で考えよう」で無理矢理まとめようとするんだけど、そういう方向で撮られてないから、唐突感がすごい。

安倍政権は在任期間が長く、しかも極めて強権的だからスキャンダルはキリがない。それを2時間の映画にするためには取り上げる題材に強弱をつけないといけないのに、そこができなかったことが失敗理由として大きいのでは。辺野古も山口も森友も加計も重要だけどほとんど強弱をつけないあの編集はないだろう。

また森達也監督のこれまでの作品では必ず被写体を突き放す部分を入れてきたのに、今回はそれがなかった。被写体の望月さんが正し過ぎるからなのか、それとも世間に叩かれすぎててかわいそうだからなのか分からないけど、結果的に彼女の被写体として魅力が全く引き出せてなかった。これは望月さんの責任ではなく監督と編集者の責任。

あと何より他社の政治部記者は、望月記者に、また現在の記者会見のあり方に本当はどう考えているのかが一番知りたかったけど、OBに短時間喋らせて終わりだったのが残念。やっぱり取材拒否されたのかな。

あとあのアニメなんだったんだろう。
意味不明さにおいては、今年見た映画の中で一番酷いシーンだった。赤ちゃんのだだっこと何が違うの。
時折挟まれる警察との衝突シーンも酷かったな。当たり屋みたいだった。オウムの時はあんなに面白かったのに。
同じ方向に泳ぐ魚群の群れもメタファーとして工夫がなさ過ぎでは。

メディアが本来の役割を果たせなくなっている現状でこの作品をつくる一定の意義はあるけど、商業作品としては全然ダメだと思った。

登場シーンは短いけど、望月さんより存在感のある籠池夫妻て何なんだろう。こちらの感情を揺さぶるのが上手い。あの部分だけが面白かった。

映画に関係ないけど、ピカデリー新宿の4番スクリーン、揺れすぎで最悪だった。手持ちカメラと大量のフラッシュと相俟って気持ち悪くなった。二度と行かない。

あと客席が中高年ばっかりだったな。あの人たちが死んだら左翼はかなり減るのかな。それはそれでまずい気もするけど。

50点。
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