しゅんまつもと

i-新聞記者ドキュメント-のしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

3.7
ラストに入る森監督の語りが「私は〜」であることがこの映画のすべてだと思うのだけど、あの語りが"語りかけ"になっていやしないかと思う。それを意図している部分もあるかもしれない。デモや選挙演説の合間に挿し込まれる魚群の映像といい、それは少し説明的すぎやしないかとも思う。考えを促すことを目的としているにしたって、それは悪い言い方をすれば受け手を"馬鹿だと思っている"ことにも繋がらないだろうか。(それが否定できないのも事実ではある)
大事な部分ではあるけど、気になったのはそのくらい。

望月さんの集団行動が苦手であるということ、方向音痴であること、あとは合間合間にいろんなものを食べるシーン(ケーキ、フランクフルト、ソーキそば、サンドイッチ、どら焼き)がしっかり捉えられているのが良い。あとはなんたって籠池夫人が最高。
終盤は、視線の交錯と横断歩道を渡るというアクションが不思議なスリルを作り出して映画になってるのが凄い。アニメーションも賛否あるだろうけどあれも皮肉ながら映画だから出来ること。映画でやる意味がある。

ここからは特に映画とは関係のないあとがきとして。
今に始まったことではないけれど、特にこの1年は自分は本当に色んなことに静かに怒ってきた。こんな国早く出て行きたい強く思ったのは生まれて初めてだった。誰が決めたのかも、何のためにあるのかもはっきりしない"きまり"のせいで、自分の大事なものが奪われたりするのってめっちゃ悔しくないですか。そういうことがゆるやかに、でも確かに今後も続いていくのかと思うと本気で絶望する。気づいた時には絶対おかしなことになってる。
でも絶望して諦めるほど簡単でもない。自分の好きな映画のことをたまに考える。自分の好きな映画は人とは違う生き方を否定したりしないし、分断された世界でも手を取り合おうとするし、生活の中にあるささやかな希望を守ろうとするものばかりだった。自分は映画を見て、当たり障りのないことを書いて終わりにしたくはない。こんなアプリのハートを稼いだところで何にもならない。映画の言語化なんて未来の自分のためでしかない。そうやって力をもらいながらこんなクソみたいな世界で生きてくしかないよね。