TAK44マグナム

上海要塞のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

上海要塞(2019年製作の映画)
2.5
人類最後の砦、それは上海!


スー・チー主演の中国発、本格的SF侵略バトルもの。
本国では酷評の嵐が吹きあふれた本作、「ウケそうなものはとりあえずコンテンツ補充のために買う」スタンスを貫くNetflixが世界配給権を獲得しました。
なので、Netflix限定配信。


数十年先の未来。
中国の宇宙船が採取した新資源「シエントン」によりエネルギー問題が解決した地球人類は飛躍的な発展を遂げていた。
しかし、シエントンに目をつけた謎の異星人の巨大母船が出現。
リオデジャネイロを皮切りに、東京をふくむ世界中の都市を次々と壊滅させ、人類存亡の危機が訪れる。
その猛威に対して人類は一致団結し、シエントンを利用したシールドで上海を覆い、人類の英知を結集した「上海要塞」を築きあげる。
いよいよ上海上空に現れた敵母船。
決戦のときは近い!


いやはや、これは凄い。
凄いパッチワーク感(苦笑)
全編、どこかで見たことあるなぁ〜と、既視感しか感じられず。
基本は「インディペンデンスデイ」で、敵母船は中央に巨大なビーム砲を備えています。
弱点も、言わずもがな(苦笑)
そこから複数の腕をもつ人型機動兵器がワラワラと出てきて、こちらはドローン兵器でそれを撃ち落とします。
敵機動兵器はプレデターと呼称され、陸上部隊と交戦もするのですが、空戦にしろ陸戦にしろ、なにかの先行作品で見たことある絵面ばかりで新鮮味に欠けるのが難点。
日本のアニメにも如実に影響を受けまくっていますね。

ドラマとしては若い主人公と憧れのお姉さん的な女性司令官の淡い感情の交流や、仲間との青春劇がメインなのですが、これも薄っぺらい。
「トップガン」を10倍薄めた感。
外側を軽く撫でただけで、全然「熱さ」が足りない。
感情移入ができなかったですね。だから最後まで眠かったです(汗)

終盤になると、それまでのどこか叙情的だった雰囲気が一変、かなり殺伐さを増した最終決戦が描かれるのですが、驚くほど紋切り型に登場人物たちが打ち捨てられてゆきます。
もうね、「さらば宇宙戦艦ヤマト」を思い出しちゃいましたよ(苦笑)
今年出来立てホヤホヤの最新作が、やっていることは70年代アニメ!
クラクラしました!
ヤマトはそれまでの積み重ねでキャラクターに感情移入ができて、それが生と死に感動を与えてくれましたけれど、本作はそこがなおざりなのが宜しくありません。
特にパンとルーの件りとか、キャラクターの相関図もサッパリ分からないので何となく想像する他なく、勝手に誰かが死んだら誰かが悲しんでいるなってぐらいにしか思えませんでした。
これはドラマとして致命的じゃないですかね。
スー・チーも演技にどことなく張りがなくて、折角の見せ場も盛り上がらなかった。
ラーメン食べるのが速いなと思ったぐらい(苦笑)
結局おかわりしないし!


たぶん、本作のウリはVFXや、機動兵器と兵士が取っ組み合いするアクションシーンなのでしょう。
多少CGがCGでしかなくて、まるでゲームのデモ映像を見ているようでしたが、クオリティは比較的高いと思います。
機動兵器のデザイン(モビルスーツみたい)や動きもまずまずで、人間との絡みも自然に見えました。
ただ、「ほら、ここが凄いだろう!ほらほら、見て!」という作り手の自信というか、「俺たちの映像、すげー!」の押し出し感が強すぎて、ずっと同じ絵面を見せられているような気もしました。
バトルの展開に抑揚が無いんですよね。
ずっと、同じ空戦や陸戦をやっている。
敵の兵器もプレデターばかりだから変化に乏しく、異星人自身も姿を現さないので敵が記号でしかないのも映像的なつまらなさを助長してしまっています。
プレデターの中からキモい異星人が出てくるとか、もっと巨大な中ボスをだすとか、そういうサービスが無い。
イマジネーションの限界が垣間見えてしまうのが、本作最大の問題点といっても差し支えないかと(次点がペラペラのドラマパート)。
何だか「インディペンデンスデイ・リサージェンス」を思い出します。
あれも鮮度の低い、枯れた映画でしたから。


しかしながら、良い面ももちろんありましたよ。
アニメ的ではありますが、都市や兵器などのビジュアルは綺麗だし、超兵器である「上海キャノン」の発射シークエンスも既視感ありありながら凝っていて美しかったです。
まぁ、上海キャノンっていう名称はどうなんだとか思いましたけれど。
上海のど真ん中から大砲が生えているビジュアルセンスも、どこか懐かしさ溢れる70年代のロボットアニメぽいですね。
あんなデカい大砲、敵からすれば良いマトでしょうに、なぜか母船のビーム砲で攻撃しない異星人は非常に心が優しい(笑)
本当は平和的な種族で、中国が勝手にシエントンを盗ったから怒っちゃったんじゃないのか(汗)

あと、プレデターが唐突に司令部を強襲する場面も良かったですね。
斧でやっつけようとしたりして。
すごい無茶だけど、意外と効果あって(苦笑)
カメラワークも勢いがあって悪くなかったです。


数十年後の未来なのに、結局シエントンによって世界がどう様変わりしたのかをモノローグで語っておしまいなので、そこは深く突っこんではいけないのでしょうね。
とにかく、中国が得たすごい資源で世界が助かった!
おかげで異星人に攻撃されたけど、中国だけはすごい資源で助かった!
凄いぞ中国!偉いぞ人民!上海、万歳!
・・・そんな映画でした。
でも、それに関してはハリウッドが作ればアメリカ軍万歳!になるし、邦画ならスペースバトルシップの乗組員は日本人ばかりになるわけなので、あまり気にしても仕方がないでしょう。
そういうものです。
それよりも個人的にものすごく気になったのが、そんな未来の話なのにかかわらず主人公たちの使っている携帯電話がスマホどころかガラケーよりも古くて使いにくそうなガジェットだって事なのです(あと、バイクがカワサキのNinjaってのも数十年後だとツラい)。
まるで平成仮面ライダーに出てくる携帯ガジェットなみに大きくてゴツい!
ディスプレイも昔の液晶みたいで、本体のデカさと比べて画面が小さくてビックリです。3インチぐらいしか無いんじゃないですかね?間違っても映画とか観るディスプレイじゃないですよ(汗)
そんな風に全く洗練されていないのですが、無駄にゴツゴツしたのをSF的だと思ってデザインされたのかもしれません。
しかし、スマホが進化したら先祖返りでガラケー以前に戻るなんてことは無いんではないかと。
スティーブ・ジョブスが存在しなかったパラレルワールドの話だったのかな・・・(汗)
あ、でも透過式のタブレットは使っていたぞ?
もしかして、あの携帯は主人公の趣味でゴツいタフギアを使っていたのかも。


そんなわけで、胸を張ってオススメできる作品ではありませんが、哀しいかな現在の日本では(需要がないし予算もないので)作れない映画だと思いますので、悔し涙で頬を濡らしながら観るのも一興かもしれません。
(相変わらず美しい)スー・チーより、誰だか存じませんがルー・イーイー役の女優さんが個人的にストライクでしたので、何とか完走できた・・・というのは内緒です。
Netflixに入っていて、上海キャノンが気になる方は是非、上海にそそり立つ巨根・・・では無かった、巨砲をご自分の目でお確かめください!


NETFLIXにて