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デンジャー・クロース 極限着弾のShinMakitaのレビュー・感想・評価

2.4

1966年8月。アメリカに追従して派遣されたオーストラリア連隊の司令部に迫撃砲が射ち込まれた。オーストラリア側は曲射砲で応射し、迫撃砲を捨てて逃げたベトコンを追うため討伐隊を送ることになる。当初、負傷者を出して戦力が半減しているB中隊が派遣されるが、敵の姿はなく、D中隊にその任が回ってきた。D中隊・中隊長ハリー・スミス少佐は、叩き上げの猛者。部下に特殊部隊なみの訓練を課し、歩哨中に誤射してしまったラージ二等兵を厳しく叱責するなど、強面で鳴らしていた。命令を受け、100名余の兵を率いたハリーは、ベトコンが敗走したと思しきロングタン・ゴム園へと向かう。まずは第11小隊を偵察に送り込んだところ、数名のベトコンと接触。無線でシャープ小隊長から連絡を受けたハリーは、敵は小隊規模と判断し追撃を命じた。ヘラヘラして気楽な様子のシャープと、生真面目でハリーの信頼も厚いビュイック軍曹が率いる第11小隊はベトコンを追い前進する。しかしそこには、小隊どころか連隊規模のベトコンたちが待ち構えていた。ベトコンはオーストラリア連隊司令部に総攻撃を仕掛けるため集結しているところだったのだ。圧倒的な戦力を前になすすべもなく死者を出していく第11小隊。シャープが死に、小隊の長となったビュイックは、全滅を目前にしてハリーに無線を繋ぐ。どうか小隊ごと砲撃し、敵を殲滅してくれと…




「デンジャー・クロース 極限着弾」

以下、ネタバレ・クロース


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オーストラリアの戦争映画です。オーストラリアやニュージーランドがベトナムに派兵していたなんて、無知な私は全然知りませんでした。アメリカとは比べモノにならないけど、オーストラリアの兵数は最終的に五万人にまで上ります。ちなみにこの映画の時代…1966年の時にはおよそ4500人程度でした。この4500人がいるオーストラリア軍陣地を攻撃するため結集した2000人のベトコンと、偶然コンタクトしてしまったD中隊100余名が全滅の危機を迎えた「ロングタンの戦い」を描き出しています。この手の絶望的戦闘映画はいくらもありますが、本作はかなりフレッシュ。

1. 不安しかないオーストラリア軍描写
…冒頭の迫撃砲攻撃のなか、軍基地の内部が描かれているんですが、これがまぁ、シロウト感満載。慌てる奴あり、ポーカーに興じる奴あり、歩哨のラージはビール飲んでるしで、なんか洗練されてないんです。でも最終的には迫撃砲の位置を特定し、そこをピンポイントで砲撃。砲台の半裸マッチョの皆様が1番頼もしく思えた瞬間でした。中盤、敵殲滅のためD中隊は空爆を要請するんですが、当然自前の空軍は無いからアメリカに依頼するしかありません。しかしアメリカも自分らの標的を爆破しなくちゃいけないから、「幸運を祈る」とか言いながら見当違いの場所にナパーム落としてとっとと帰ってしまうのです。

2.かつてないほど解りやすい戦闘
まず戦闘が昼なので視覚的に解りやすいですね。そしてD中隊を構成する第11、10、12小隊&HQ(中隊陣地)の位置関係が単純で、地図を見なくても把握しやすいんです。前半でメインキャラ紹介をして、ロングタン移動中に誰がどの小隊に属しているのか見せているので、今第何小隊がどこで何をしているのかがパッとわかるんです。

3.必殺技デンジャー・クロース
この戦闘の、というかこの映画のMVPは、実は曲射砲のマッチョたちです。その砲撃の精密さこそがオーストラリア最大の武器でした。第11小隊の危機、そしてD中隊全体の危機という二度の絶体絶命シーンで繰り広げられるデンジャー・クロース砲撃の迫力。これは見応えありましたね。

4.知らないからこそのキャラ立ち
…オーストラリア映画に馴染みが無いので、登場する俳優は誰一人知りません。だからこそ先入観なくキャラを追えます。主役である少佐ハリーは、もう松平健にしか見えない貫禄のルックス。物語のエモーショナル部分担当のラージ二等兵は、若い頃のハリソン・フォードっぽい感じ。その他、ビュイック軍曹やトッド軍曹やシャープ少尉、さらに司令部のデブ中佐など、みんな個性的でしたね。

5.オーストラリア軍装備のフレッシュさ
…まず銃器のバリエーションが凄いです。ベトナム戦争映画でお馴染みのM16やM60はもちろん、米軍じゃない故のL1A1小銃、さらにはオーストラリア独自のオーウェンマシンカービンという珍銃も登場します。あとは装甲車ですね。ベトナム戦争映画に装甲車って画が凄く新鮮に見えたのは俺だけでしょうか。


ツラツラ書いちゃいましたが、恐らく2020年に日本公開される戦争映画の中ではダントツの出来であることは間違いないでしょう。超オススメ!
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