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アトランティスのsonozyのレビュー・感想・評価

アトランティス(2019年製作の映画)
3.5
ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督曰く“まだ戦争が終わっておらず、環境破壊問題も未解決のウクライナの現実”を知ってもらうために作られたという作品。

ウクライナ人にとって、ウクライナ東部=失われた土地(≒ Atlantis / 一夜にして海に沈んだとされる伝説の大陸)の現実をワンシーン・ワンショット(ほぼフィックス)の長回しで静かに伝えていく。

俳優ではなく、実際に戦争を経験した元兵士のアンドリー・リマルークを、主役の元兵士セルヒー役に起用。

PTSDに苦しむセルヒーは、元兵士仲間の自殺や、勤めていた鉄工所の閉鎖など辛い状況を経て、給水車のドライバーの仕事を始める。

立ち往生していたバンに乗っていた女性に助けを求められ、車を牽引したのをきっかけに、彼女らがボランティアで行っている戦死者の死骸を回収・検体・埋葬するという活動を手伝う。

再び、土砂降りの中、セルヒーと彼女が乗るバンが故障し、二人は回収した死骸が並ぶ荷室で激しく結ばれる・・

相棒との危険すぎる射撃訓練、寂しい部屋、屋上から見える工場群、ぬかるみ荒れた道路、掘り起こされたミイラ化した遺体、淡々と状況を口述筆記していく検体、終わらない地雷撤去作業・・

暗く重いシーンが続く中、最初と最後のサーモグラフィ映像(ジャケ写)が伝える人間の体温・熱が印象的。

パワーシャベルのバケット部分を見つけたセルヒーが給水車から水を溜め焚き火で温めて入浴するシーンだけがちょっとほっこり。
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