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ファースト・カウのfujisanのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
3.4
『アメリカの歴史が学べる映画』

アメリカの歴史を精緻に描くケリー・ライカート監督の作品。質の高いインディペンデント映画を撮る方でファンも多い監督ですが、格調高い作品が多いこともあって、劇場公開されることが少ないですよね。


■ どんな映画か

□ 19世紀初頭、1820年頃のアメリカが舞台

1770-80年代のアメリカ独立戦争から、
1840年代からのゴールドラッシュ~南北戦争の間で、あまり映画化されない時代。

「ゴールデン・リバー」と同じオレゴン州が舞台ですが、映画で描かれたゴールドラッシュはまだ始まっておらず、そこからさらに3,40年前の、原始的な暮らしをしている時代。電気はもちろん、カメラもない時代の物語です。

同時代を描いた映画で有名なのは、レオナルド・ディカプリオがアカデミー賞を受賞した「レヴェナント: 蘇えりし者」で、あの映画でも描かれていたビーバーの毛皮を狩るハンターたちが本作でも描かれていました。


□ 何が描かれているか

本作は、そんなビーバーの毛皮の狩猟隊に料理人として同行する男と、一攫千金を夢見て中国からやってきた男、二人の男の友情物語でした。

料理人のクッキーは腕利きの料理人ですが優しすぎる男。中国からやってきたルーも頭は切れるものの、差別的な見られ方もして馴染めない。そんな優しい二人が、集落に初めて来た牛(ファースト・カウ)のミルクを使ってお菓子を作り、一攫千金を目指す、というストーリーです。


□ 映画の雰囲気

当時のアメリカを精緻に描いた映画で、アメリカン・ドリームの名のもと”儲けたもん勝ち” の考え方は既にこの時代から始まっているんだ、と思わせる社会的な面もありますが、それはメインではなく、ただただ静かなアメリカの自然と友情の物語です。

エログロ描写、クィア的な要素もなく、たとえばアメリカ史を学んでいる人は課題映画として必ず見るように指定されるような、そんな映画。興収は望むべくもありませんが、専門家の評価が非常に高い映画のようですね。


■ 感想

電気が普及してない時代の話なので映像の半分ぐらいは暗いシーン。しかも暗い中での微妙な演技が重要だったりするので、ちょっと眼が疲れました(観る時はスクリーンに近いほうがいいかも)

映画そのものも淡々とゆっくりとしたペースで続くので若干眠くはなりましたが、暗い映像が多い分、日中のオレゴンの自然の映像の美しさが印象に残りました。

俳優陣も地味な技巧派俳優が多かった印象ですが、スター俳優の知名度を借りる映画でもないと思うので、これで良かったと思います。

そんな中、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」でレオナルド・ディカプリオの妻を演じたリリーグラッド・ストーンが本作でも先住民の女性の役を印象的に演じており、この演技がマーチン・スコセッシの目に止まったのかなと思ったり。

最後に『牛』。原作小説には登場しないキャラクターのようですが、めっちゃ可愛かったです。ちゃんとオーディションもして、目が可愛い牛を選んだとのことですが、劇中でちゃんと重要な演技もしていて驚き😋

なお、動物虐待シーンは無かったのでご安心を👍




2023年 Mark!した映画:364本
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