真田ピロシキ

SKIN/スキンの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

SKIN/スキン(2019年製作の映画)
2.7
タトゥーは消せても犯した罪は消せない。

レイシストのブライオンがシングルマザーのジュリーと恋に落ちた事で転向する様子を描いたストーリー。実話を基にしたとあるが、このシングルマザーの下りは実話に含まれてるのだろうか。あんなタチの悪いレイシストに良き母親として描かれている女性がほとんど初対面から好印象を抱くのがどうにも嘘くさい。前の男で酷い目に遭っているのにまた同じように暴力的な属性の男と簡単にくっつくのは、映画で描こうとしている娘ファーストな女性像とは相反しているように見え、この人自身に幾分レイシスト傾向があるのではないかとすら思えてくる。このキャラとその娘達はブライオンの動機付けのために存在しているようで実在感があまり感じ取れない。

それでブライオンはレイシスト団体から抜けようとし始めるのだが、さっきも書いた通り動機は女のためで罪悪感に目覚めたとかじゃない。だからコイツが散々やってきたはずの加害行為については大して触れられない。せいぜいが以前暴行を加えた黒人少年がタトゥー除去手術中に悪夢として出てくるくらい。母親が夢に出てきてやると脅しててその伏線は回収してるがそんなんじゃダメだろ。もっと罪に向き合わせないと。あまつさえFBIのブラックリストに載ってるから仕事に就けない(自業自得)とか脱退を許さないレイシスト団体に付け狙われているとか被害者面ばかり見せられて白ける。タトゥーを消したことで生まれ変わったように描かれているが、自分には証人保護プログラムで身の安全を確保したマフィアと同じようなものにしか見えなかった。これで感動的な後日談(実話)を見せられてもね…映画内のブライオンがやった事はあくまで転向であって改心ではないと感じられた。

この話より浮浪少年からレイシスト団体の忠実な手駒として育て上げられたギャビンの物語を描いた方がずっとレイシズムの蔓延について考えさせられる映画になった気がする。コロナ禍でますます貧困が拡大する今、こうした主義のないヘイトは増えるだろうし、それを止め得る社会福祉の大切さを訴えていかないと。