鈍亀

返校 言葉が消えた日の鈍亀のレビュー・感想・評価

返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)
3.5
暗い歴史が影を落とす非凡なホラー映画。
原作がゲームで数々の賞を受賞しているということから鑑賞。

★あらすじ★
戒厳令下の台湾。1947-1987年に起きた白色テロ時代の物語。真っ暗で雨の降りしきる学校で目覚めたファンは校内をさまよう。校舎で出会った後輩のウェイと共に学校を抜け出す術を探しながらここで何が起こったのか次第に思い出していく。

★感想★
 戒厳令という耳慣れない出来事が関わっているため少し調べてから鑑賞。物語の根幹に関わる話なので頭に入れてから見るのをオススメしたい。私達がなかなか知らない歴史だが戦時中の日本やナチスドイツを思い浮かべて頂ければ状況としては分かりやすいだろう。
 ただの歴史物ではなく、怪物のような存在も出てくるが、校内の探索からあぶり出される登場人物たちの暗い出来事が、逃れようのない悲劇を想起させ、苦しくなる。
 学校の中での出来事は悪夢にいるように恐ろしい現象の数々だが、その過程で差し込まれるファンとウェイの過去はさらに哀しく、恐ろしい。悪夢と現実がリンクし、悪夢を脱したとしても残った現実もまた悪夢のような悲劇、といった二重構造となり、史実がバックグラウンドにあることで作品に厚みをもたらしている。
 昨今毎年上映される日本のホラーは物語よりも、起用する俳優に力を入れているが、本作は物語にウェイトをおいている。世界を意識した映画。
 歴史を知り、この作品を見れば、パートごとにかわる主人公たちの哀しい過去が影を落とし、まるでそれが校舎全体を覆っているような気分になるだろう。怖さの中に哀しみや愛を含んだ素晴らしい作品だった。

 ただ一つ、日本の配給会社が悪いのだが、これまたダサい副題がついてしまっている点については辟易してしまった。
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