dita

リチャード・ジュエルのditaのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
4.0
@ 大阪ステーションシティシネマ   

本年の堅実映画大賞筆頭。前半30分はひたすらハラハラ、中盤はこの上なくイライラ、そして終盤にきっちりウルウル。○○力(りょく)なんてことばは使いたくないけど、イーストウッドの映画は監督力が凄いなぁといつも思う。

ということで、先日の健康診断で体重はほぼ変わらずもお腹周りに著しい成長が認められたわたしだっていつ孤独な爆弾犯にされるかわからない。もしこの話が創作だとしたら、コナンなら3秒、少年探偵団だって3分あれば証明出来るアリバイを手を変え品を変えなかったことにしようとするFBIに「じいさん、それはいくらなんでも無理があるやろ」と突っ込みたくなる実話に憤りを超え諦めの感情でいっぱいになった。

どれだけ正義感に燃えても、どれだけ勇気があっても、どれだけ誰かを守ろうとしても、一度敗者になってしまった者はその立場から逃れることは出来ない。雪だるまのようにどんどん大きくなる「負」の形はどれだけ綺麗にまとまっても「勝」に形を変えることなど不可能だ。世の中に対して怒ったところで何も変わらない、涙を流して訴えたところで認めてもらえない。終わりよければ全てよし、なんて嘘だ。美しい心が人生を切り開くなんて嘘だ。喫茶店で「終わった」とドーナツを頬張るリチャードの顔に清々しさは一切なかったように思う。

この実話を映像化するにあたり、「怒り」を抑えて淡々と(でもエンタメとしてちゃんと面白いのが凄い)描く意味。実話を超えて現実を描くじいさんの凄味。まだまだ長生きしてください。
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