ちゅう

リチャード・ジュエルのちゅうのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
4.4
"反撃の準備はできているか"


権力の怖さ。
無責任な人々の怖さ。


人間は自分から遠い存在であればあるほど無責任になれる。
相手が血の通った人間であると認識できないから。
想像力が及ばないから。

そして無自覚な私刑ーリンチーに加担することになる。


発達した情報技術のなかで、噂程度のものが拡大される。

サピエンス全史という書籍のなかで著者ユヴァル・ノア・ハラリは、噂が人間の繁栄に不可欠だったと述べている。

けれど、その噂は現代では拡大され僕たちに牙を剥く。
無責任な人々の矛として。

晒し者にされ被害を被っている人は一人や二人じゃない。


リチャードは太っている中年男性で、発言も変わってるから気持ち悪く見える。
僕も聖人君子ではないから、それなりにそう思う。

でも、決定的な物事に関してはそういうイメージを判断材料にしてはいけない。
イメージを判断材料にすると噂はますます牙を剥くようになる。


容疑の段階でリークした記者がリチャードの母の記者会見で泣いていたけれど、彼女はどれだけ反省しただろうか。

こういう冤罪の事案は後をたたないが、それらに関わった人たちは反省しているだろうか。

それを楽しんでいる僕たち観衆は反省しているだろうか。


心をえぐられる思いで涙があふれた。
ちゅう

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