Smoky

リチャード・ジュエルのSmokyのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
3.5
齢90歳を迎えてもなお創作ペースを緩めない御大の監督最新作。世の中にSNSが登場するずっと以前の実話の映画化だが、国家権力の面子とマスメディアによって誤報(フェイクニュース)が生み出され、拡散される途中で変容され、人々に消費され、その結果、個人や家族が潰されていく「構造」は昔からずっと全く変わっていないことが分かる。

一方で本作は、理不尽で不条理な捏造と消費をする世の中に対し、真正面から正攻法で立ち向かった三人による人間ドラマでもある。そして、それらを某◯◯ル◯ーグ監督のように無駄に劇的に描くのではなく、淡々と描く素晴らしさは御大の真骨頂。その意味では『ハドソン川の奇跡』の延長線上にある作品。やっぱり、人の評価や選ぶ基準は、発せられる言葉ではなく、日常の態度や行動によってされるべきだと改めて思う。

残念なのが「捏造」を描いた本作におけるオリヴィア・ワイルド演じる女性記者の描写が、逆に、公開時に同僚によって「捏造」(推測による描写)だとクレームがついたこと。劇中では、彼女が自らの過ちに気付き、反省し涙を流すことで「贖罪」されたように描かれているが、ずっと以前に本人が鬼籍に入っているので真相は闇の中。素晴らしい映画だけに、この点だけが残念。
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