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夏時間のtoのレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
5.0
冷麺を食べたくなり、食べた。
すべてのシーンが絵になっていた。
洗濯バサミも、ハトムギ化粧水も、除虫菊の茶色い蚊取り線香もかわいかった。

ZOOMによる監督のアフタートークがあった。
こちらはユーロスペースで満席に近い客たちが日本初上映の回を見ている(つまりは関心が高い)のだけれど、
韓国にいる監督の方は、後ろを知らんおばさんが通ったり、平気で他の人の電話の話し声がしたりして、
この非常識な感じはなんだろう?と思っていたら、事情があるらしかった。
後ろを点滴を押しながら歩く人がいたり、
監督自身の右手首にも患者さん用の識別バンドみたいなのがついていて、
場所は病院で、監督も何らか受診している状況なんだなということがわかった。

「みたい映画と撮りたい映画に違いはありますか?」という質問に対して、監督は、
「現実の世界よりも、映画のなかの世界の方が良い、という考えがあります。だから映画では良いものを撮りたい」とおっしゃっていた。

映画のシチュエーションでは、父親は仕事が思うようにいかず、主人公も自分や親との葛藤を抱えていた。
現実にはもっといろいろあるんだろうな、と思った。

また、好きな日本の監督として、小津安二郎、相米慎二、成瀬巳喜男、濱口竜介など、多すぎてあげきれない、と笑顔に。

確かに、ローアングルの美しい構図で人々のやりとりを繰り広げるところは小津っぽかった。

しかし、階段。
舞台となるハラボジ=おじいさんの家は、居間の中央から二階へ続く立派な階段があり、
「あ、下女」と思ったギヨナーも多いに違いない。

アフタートークで撮影した家についても話してくれた。
今の住宅にはあまりない、1970年代頃に韓国で好んで建てられたスタイルの家だそう。
まさに、キム・ギヨン監督作に必ず出てくる、
階段のある家。

モノクロの「下女」よりむしろ
カラーの「火女’82」の家の階段に似ていた。

日本映画も好きな韓国の新進監督の作品の中に
しっかり息づいているキム・ギヨンをみつけてうれしくなりました。
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