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権力に告ぐのKUBOのレビュー・感想・評価

権力に告ぐ(2019年製作の映画)
3.8
冒頭、検察から出頭命令を受けていた男女2人が命を狙われ、事故・自殺に見せかけて殺される。この事件を追うソウル地検のヤン検事(チョ・ジヌン)は、国を揺るがす「韓国外換銀行」の不正売却事件にたどり着く。

2006年に実際にあった「ローンスター事件」を元にした、実話に基づく作品だが、政権や経済界の大物たち、元大統領らまで絡む腐敗の構造、検察内にまで及ぶ忖度と隠蔽。

権力側に都合が悪くなると検事総長すら首をすげ替えようとするところなんか、最近の文在寅政権でも同じことが行われていたし、韓国は全く変わってないなぁ、と。

まあ、日本でも、検察審査会が再起訴すべきとした「桜を見る会」にしても再び不起訴になるんだから、政権に対する検察の忖度はどこでも同じか、と虚しくもなる。

どんなに「上からの指示」で捜査を打ち切られても、独力で突破していく正義感のかたまりのようなチョ・ジヌンのヤン検事は庶民感情を背負い、捜査に協力するヒロイン、イ・ハニ演じるキム・ナリは良心を持ったエリートとしてカッコいいけど、権力側にいる人間として韓国のグレイゾーンを象徴する存在でもある。

最後の最後でカタルシスが爆発しておもしろかったけれども、経済用語が難しく、また利権の構造が複雑過ぎて、ちゃんと頭に入ってこなかった。

それでもこういった実際の事件を映画化し、罪に問えなかった『権力に告ぐ』とぶつけるところに韓国映画人の矜持を見た。
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