じぇいらふ

ファミリー・ネストのじぇいらふのレビュー・感想・評価

ファミリー・ネスト(1977年製作の映画)
3.4
あの伝説の長尺映画『サタンタンゴ』のタル・ベーラ22歳のデビュー作。全然作風違ってたけど、結構面白かった。

これは実話です〜トレンチコート🧥の女性がタバコ🚬吸いながら向こうに歩いていく〜はじまり。ここの冒頭シーンが、この作品中最もタル・ベーラっぽい瞬間😆かっこよき✨

共産党政権下のハンガリー。住宅難で3世代家族が住んでいる。息子が除隊して帰ってくるが、父親は息子夫婦に出て行って欲しいと、しょっぱなからギクシャク。。。

映画で大家族というと、大体色々あるけど家族っていいよね的な家族愛をうたう作品がありますが、本作は真逆の互いに相手をひたすら罵り合うストレスだらけの家族関係を、ドキュメンタリーぽい突き放したタッチで冷徹に見つめ続ける地獄の大家族映画です。

この親父というのがなかなかな強キャラで典型的な家父長制の権化のような人ですが、
「おれは立派にやってきた」「おれを手本にしろ」とかいろいろウザイ発言が続きます。
息子の嫁が大嫌いで、「あいつは浮気している」「アバズレだ」とか、そこまでいっちゃあ修復不可能だろ的な罵詈雑言いいたい放題。息子は嫁をかばいつつも、嫁に対する不信もあるので全然頼りない。この息子もその弟もかなりなクズ野郎であることが早くにわかります笑。親父はうるさいけど、まともかしら?と思ってたら、、、こいつもクズ親父だった笑。クズ率高い家族だな。

主人公の息子夫婦の嫁は、はやくこんな家族から離れたい。しかし当時のハンガリーの住宅事情がやばくて、なかなか自分の住む部屋を確保できない。毎週の様に役所に公営住宅の申請にいく。超官僚的な役人が申請者達の徹底した塩対応ぶりに毎度泣かされて帰ってくる。「相手の立場に立つことは、私の仕事ではない」というパワーワード笑

住むところさえあれば〜なんでもいい❗️とかキツイ世情。家族大事とか政府は言うけど、こんなんじゃ全然ダメじゃん、やってらんねーよ💢という、若きタル・ベーラのストレートな怒りが感じられてわかりやすいです。

当時のポップミュージックをバックに、遊園地デートシーンとか、若い演出が微笑ましいです。ケン・ローチのデビュー作『夜空に星があるように』ぽい。たまたま同じ苦悩する若い夫婦のお話だったり。