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ふたつのシルエットの教授のレビュー・感想・評価

ふたつのシルエット(2020年製作の映画)
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上映時間37分の中に、男と女の7年間が浮かび上がり「別れ」から始まったふたりの関係が、見事なまでに「埋まっていく」というとにかく的確な「時間」の演出に引き込まれた。

「過去に何かあった」ぐらいのことは誰の人生にも起こり得ることでもあり、当てはまる普遍的な出来事で、本作は「映画」としてそれらの具体的なことには言及しない。
他人事のラブストーリーをただ見つめる我々観客にとって、それらを不自然に説明されることほど野暮なことはない。

ただただ男と女の仕草や表情から、感情を読み取れば良い、ということ。

そのふたりにしか知り得ない「過去」すらもそれら個人の感じ方や、記憶によってすれ違うし、そもそもがすれ違っていたのだから、ふたりは別れたのだ、ということさえ、踏まえておけば本作はとても楽しめる。

「再会」から生まれる非常に不自然なやり取りも。その設定から会話の推移を見守っていけば、全くの他人ではないが、今は何の接点もない他人であるという現実。
それに反してある時期は心も身体も通わせあった「関係」であるという別の側面、その自分と他者、というものの不可解さが映画を盛り上げる。

付き合っていた頃は、きっと互いを傷つけ合うしかできなかったであろうふたりが、空白の時間を経て、元には戻らない時間の尊さを知り、その記憶を受け入れて現実に帰っていく、という今時の日本映画ではなかなか見られない、上質のラブストーリー。大傑作。
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