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辰巳のJPのレビュー・感想・評価

辰巳(2023年製作の映画)
3.7
▼漁師×死体処理

漁業組合に行ったりすると、暴力団事務所かと思ってしまう時がある。魚を絞め、血に塗れ、それを売買する漁師は、農業や林業の従事者とは一線を画している。生殺与奪を厭わず、グロテスクな臓物のやり取りに慣れた、肝の据わった目。
今作の辰巳が漁師をしながら、裏で訳ありの死体処理をしているという設定から、もう惹き込まれた。

そんな辰巳が「嫌な後始末」をさせられながら、抗争に巻き込まれていく、という筋書きだけで、もう目が離せなくなる。

▼魅力的な筋書きと、葵のキャラ造形!

登場人物みんな口が悪いし、すぐツバ吐くし、殴りまくるけど、主人公の辰巳にどことなく品があり、暴れ馬の葵にもちょっと可愛げがあるから、ずっと見ていられる。魅力的な作品だ。

てっきり辰巳が葵の用心棒になって敵を殺しまくる、みたいな痛快な話かと思いきや、序盤の二人の仲は険悪。めちゃくちゃ喧嘩してるし、葵が殺されようとしても止めない。ヤクザ映画として満点なくらいドライな関係だし、か弱い女子を護るためにヒーローになる辰巳、みたいな筋書きからはどんどん遠ざかっていく。最高!
葵が他の強面のオッサンたちに負けないくらい口が悪くて荒いし、彼女の暴走と憎しみの連鎖が止まらない。それに巻き込まれたくない辰巳だが、冒頭で鮮烈な印象を残した弟(藤原季節!)が重なる…。葵を護ることになる動機の説得力が凄い!

▼(ややネタバレ)実は「マッドマックス」?!

血と車と狂った悪役…
もはや「日本ヤクザ版・マッドマックス怒りのデスロード」!笑

自動車整備工場で働く葵が、辰巳の車のエンジンを直し、辰巳に駆動力を与えるというのが◎
結果的に、葵が拳銃を死体と同じように海に投げ捨て、殺しの連鎖を断ち切り、辰巳の車を継承するという締めくくり方も好きだった。
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