カタパルトスープレックス

Der Bunker(原題)のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

Der Bunker(原題)(2015年製作の映画)
3.6
りょーこさんから回していただいたドイツ産の不条理コメディーです。ありがとうございます!このニキアス・クリッソス監督は本作が長編デビューだそうです。デヴィッド・リンチやロマン・ポランスキーに影響を受けたそうで、しっかりと影響を反映させ、すごく真面目に不条理しています😂

舞台はシェルター(表題のDer Bunkerは塹壕/シェルターという意味)のように地下に埋まった宿泊宿です。地下に埋まった宇宙船も想起させます。そこで暮らすのは父と母、そして8歳の息子のクラウスです。「シェルター」に宿泊客の「生徒」がやってくることで物語がはじまります。「生徒」の目的は全ての理論を組み合わせた統合理論の完成で、静かな場所を求めて「シェルター」にやって来ました。果たして「生徒」の目的は達成できるのでしょうか?という話です。

まず、キャラクター設定がとても面白いです。名前があるのは息子のクラウスと母親に寄生している(とされる)宇宙人のハインリッヒだけです。名前がある二人は謎の存在です。クラウスは8歳にはみえません(おそらく役の上でも8歳ではありません)。ハインリッヒも本当に存在するのかどうかわかりません。

父親と母親、そして「生徒」の名前は明らかにされません。この名前がない三人もすごい人たちです。父親は(職業はよくわからないものの)中国語の新聞を平然と読んでいます。母親も(真実かどうかわからないものの)宇宙人が寄生しています。「生徒」は異なる学問を束ねる統合理論に挑戦しています。

クラウスと「生徒」は両方ともとんでもない目標を持っています。クラウスの目標はアメリカ大統領になること。「生徒」の目標は異なる学問を束ねる統合理論をまとめることです。シェルターは(一般的には)一時的な避難場所であり、ずっと住む場所ではありません。クラウスにとっても、「生徒」にとっても大きな目標を達成するための一時的な場所として描かれています。

ラストの解釈はネタバレ設定のコメント欄で!

さてさて、肝心のコメディーとしてはどうか?クスッと笑ってしまう場面はいくつかあります。監督もコメディーが好きなのでしょう。リビングにグルーチョ・マルクスの肖像画がかかっています。でも、真面目すぎるんですよ!真面目に不条理しちゃってる。

コメディーじゃなくて、もうちょっとシリアスな不条理劇を作ったらもっといい作品が作れるのではないかと思いました!