真田ピロシキ

ゲームチェンジャー: スポーツ栄養学の真実の真田ピロシキのレビュー・感想・評価

3.5
昔は菜食主義を偽善者みたいに思っていたところがあったが、畜産が地球温暖化に影響を及ぼすと知ってからは考え方を改めてグレタ・トゥーンベリを少しは見習いたいという考えから週一くらいで極力ノーミートデイを設けている。今日がちょうどその日。

本作は軍隊で格闘技指導をしている総合格闘家が怪我して菜食が回復に及ぼす効果を知り、様々な分野の菜食主義者の話を聞いてそのメリットを説いていく筋書き。しかしその語り口は例えば菜食主義の総合格闘家が下馬評を覆すにしろ、"男らしさ"を表す勃起の持続力をテストするにしても「どちらが上でしょうか?」みたいな体を装っていても映画の流れからどちらが勝つかは明白で結論ありきで撮られた映画に感じることが多く、ドキュメンタリーとしてはあまり面白くない。中立である必要など全くないし映画が言っていることは本当なのだろうけれど、これもプロパガンダにすぎないんじゃないかなあ。本来、人類は草食中心であったという説を披露したり、動物を仲介するとタンパク質が損なわれてしまうなど興味深い発見をしているのに、この一本調子ではゆるベジの人にしか刺さらないと思う。少なくとも栄養面に関する話では。

面白くなるのは肉食産業の闇で、かつて煙草で行われていたのと同じ事が肉食産業で繰り返されていると説かれる。昔、ベーブ・ルースとかに煙草を吸わせて喫煙をカッコいいと刷り込んでいたのと同じように、煙草が規制され始めたら同様にアスリートを広告塔に肉食の価値を伝道して、今では肉食=男らしいという図式が完成してることを疑う人はいないかと思う。最初の方で肉食メンとして挙げられた映像の放つ有害な男らしさと言ったら。我が国でも肉食系に草食系という言葉ありますよね。あーいうステレオタイプの塊はもうやめようよ。

そして畜産がどれだけ土地と資源を浪費し環境にダメージを与えるかも語られる。そりゃあこれを知ったら行き過ぎた肉食を見直した方が良いとも思うって。Twitterにはヒステリックな反ヴィーガンが多数生息してるようなんだけど、これを見て考えて欲しい。アイツら宗教的だから見ても無駄かもしれんけど。「我々日本人は食べる動物の命に感謝を込めるからヴィーガン等より尊い!」みたいな意味不明のスピリチュアルに入っている連中だし。しかし"男らしさ"の象徴のようで昔は肉ばかり食べていたアーノルド・シュワルツェネッガーが「いきなり肉を全部やめなくていいから週一くらいで始めると良い」と言ってたのはもしかしたらそういう人にも通じるかもしれない。

私はそろそろ週二くらいに増やしたいです。ネックは外で食べるには店が少ない上に高くて、家で食べるにもスーパーには大豆肉の食品くらいしかなくて毎度自分でやるには面倒臭い。結局菜食は時間とお金のある人にしか出来なくて、貧乏人は安価でリスクの高い肉食を強いられる現実がある。その血と地球環境を糧に肉食産業は肥え太っていくディストピア格差社会。憂鬱な話だ。