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すばらしき世界のVigocultureのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0
観てる途中で「タイトルが素晴らしいな。
」と思えたので、素晴らしい映画です。

アフター『三度目の殺人』ということで。

はじめ30分西川監督/途中1時間是枝監督/最後30分西川監督ですよねって感じが。

舞台は別としても、わざとなのか、たまたまなのか、分福の魅せ方みたいなのが是枝作品と西川作品の地平をならすようになっていってて、画が似すぎてる。
西川監督が描きたい筋みたいなものは他作品同様に伝わってくるけど、特に”陽”の部分を見せるときが全く同じになってきてて、そこまでしなくてもっていう。

それ以外の部分についても、以前よりわかりやすい=大袈裟な描写が増えたなぁと。
キャリアを重ねて、より大衆に開かれた表現になっていくんだなぁという印象。
海外でも評価されるにはそれくらいやらないととは思うし、『万引き家族』はそのあたりが爆発してたし。

わかりやすい描写自体の良し悪しは見る者の匙加減でしかないけど、喧嘩の口上のとこが激スベリしてたからあれは本当になくてよかったと思う。はじめ30分くらい”至極淡々と”進められるところが西川さんの良さと思ってるだけに、馬鹿にするわけでなくあれは全くいい方向に作用してなかったので、あの手のユーモアはさすがに”苦手なことやってるな”というのが見てとれてしまって。
他のクスッとユーモアはかなり効いてたからなぁ…

太賀のキャラはいい役割でした。
最後の小説が全然いい書き出しじゃなかったのは気になったけど、図書館の外で電話しながら子供の泣き声がオーバーラップしてくるあたりが良くて、そこから福岡の流れは全体的にめちゃくちゃ良かった。

そして東京戻ってからがちょっと長いか。
その段階からまだ新しい要素入れるのかーと思うとちょっと詰め込み感が。
起承転まで綺麗にきて、結の中で二転三転するなぁ…
福祉施設のくだりが全部えぐすぎて「ここまできてこんなん持ってくるんかい!」ていうのは西川節真骨頂かと。最終的にその印象が強すぎるくらい。
その前の1時間是枝ゾーンで平和ボケしてましたわ。

こうやって全体に通底する人間の”えぐみ”みたいなものをサラッと描けるところが西川監督の凄いところ。
これが他の監督だとえぐさに振りすぎてしまって暗くて血生臭い『ジョーカー』みたいな雰囲気が全体を支配してしまいがち。
逆に是枝監督はそのあたり全てフタしてしまうし。

ラストはコスモス見ながら倒れるあたりで終わってほしかった。
原作があるからしょうがないけど、見せずに終わってほしかった。
あそこから明転して太賀が走ってるとこ見せられるの本当に萎えるのよ。
暗転したとこで「なんでそこで終わらんの!」ていうのが、いつからか邦画あるあるになりかけてる。
放心状態の太賀の肩抱えながらアパートの2階から降りていくところとか冗長も冗長やったよ。

黄色の自転車がカゴ付きシティサイクル系じゃなくてクロスバイク系なのは原作準拠?違和感すごすぎて要らんなぁと思ってしまった。

分福が立て続けに山谷を舞台にしてるあたりに、東東京を食い物にしてるのかどうか問題を感じて長澤まさみの発言はメタ的にやってんのかなぁと思えてしまった。
あんな端役にわざわざ長澤まさみを持ってきたということは、山谷をピックアップしていくぞという決意の表れですかね。
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