このレビューはネタバレを含みます
大人な映画でした。
タイトルはものすごい皮肉だなあ、と思いました。
エンディングで『すばらしき世界』というタイトルが現れる頃には三上はもう死んでいるんですから。
ただ、彼自身が満足して死んでいったなら、この感想も少し違ってきます。
ゲーテの『ファウスト』で、主人公が希望を胸に抱いて死んでいったことを思い出すと、三上もまた人生で最高だと思える瞬間に死んでいったのだという、救いのある話なのかもしれません。
この映画はただのヤクザの社会更生の話ではないように思えます。
そういう感動的な物じゃなくて、認めてくれる相手がヤクザから堅気になっただけで、三上はずっと誰かから認めてもらえる人生を望んでいます。
彼は誰かに認められていないと生きる価値がないと思っていて、きっと、一番認められたかったのは母親になんでしょう。
彼の考えの子供っぽさはそこから来ていて、まわりの大人たちが彼を諭して大人にしてくれる。
精神の成長の映画でもあるんです。
三上は考えれば考えるほど不思議な人物なんですが、この人物を演じたのが役所広司で本当に良かった。