ミーハー

すばらしき世界のミーハーのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

観終わったあと、しばらく泣きながら呆然としていた。

カタギの世界ではがまんすることばっかり、がまんしたところでそんなにいいこともない、けど空は広いと聞くよ。
普通とは。カタギになるとは。
三上にとってそれは、暴力を振るったり暴れたりしないということだけではなかった。
彼に染みついて離れない。力でねじ伏せるという手段。そして、彼にとって問題になるのは世の中の弱者への風当たりや理不尽な難癖。筋は通ってる。けど解決法は暴力しか知らない。それで生きてきたから。

母親を求める子供の心のまま、闇側の世界で生きてきた三上が、今度こそはカタギになると決めた世界で出会った人々は数少ないけれど、善良な人々だった。善良な世界とのズレにもがき、素直になれなかったりしながらも、本来持って生まれた優しさやまっすぐさを正しい方法で表現できるようになった矢先の死。
ラストの凶暴さを堪えるシーン、その後の涙、コスモス。悔しいけど、彼の空は広がったのだろうか。世の中単純じゃない現実を突きつけられて呆然としてしまう。心が痛い。

役所広司の熱演がすごくて。必死に隠そうとする凶暴さや、務所生活で染み付いた規則正しさ、世間とのズレ、困惑、滲み出る子供っぽさ、暴れてる時の目つき。
出会う人の中でもスーパーの店長が特にすばらしくて、彼の真っ当な優しさと男気に泣けた。
太賀演じる津乃田と同じように、観ている側も三上を好きになっていく。私は完全に津乃田目線で観ていた。彼が代わりになりふり構わず泣いてくれたおかげで、声を出さずに泣けた。

観終わって数日頭から離れない作品だった。
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