2024.7.31(Wed)
Awesome City Clubがこの作品のおかげで日の目を見ることができたというところで気になっていたので今更ながら鑑賞。
まずサブカル系特有の言葉の選び方とか癖のある話題とか、とにかく何から何まで共感性羞恥心を掻き立てられまくりでめちゃくちゃヒリヒリしました。絹と麦が会話の中で鑑賞者そっちのけでサブカル勢が好きそうなものにツラツラ言及していく演出に、製作陣が「サブカル被れはどうせこういうのが好きなんだろ~」と鼻ホジしている姿を勝手に垣間見てうへぇとなりましたが、それをまんまと好きだった自分にもうへぇとなりました。私もタムくんに似顔絵描いてもらいたい人生だったよ!!
でももうそういうものが好きだったことを冷静にメタ認知するようになっている自分にふと気づいて、今でも文化的なことには精通していたいと思っているし、いわゆるサブカル系が好きそうなものにも興味があるから自覚はなかったけど、自覚のないままいつの間にか私は麦側の人間になっていたんだなと衝撃を受けました。
文化的な営みは生活に余裕がないと楽しめない。親からの仕送りであんないい部屋に引っ越して同棲してたのなめてるけど、2人とも親の庇護下でぬくぬくしていたからこそ学生時代はサブカル漬けでいられたんだと思います。麦みたいに生活のための仕事に忙殺されるようになったらそりゃパズドラしかできなくなるよ。丁寧な暮らしをして自分の趣味や好きなことを追求する絹と、「仕事なんだから」で全てを片づけられるようになってしまった麦とではもう生き方に対するスタンスが違うわけで、それは嚙み合わなくなってくるよなぁと思いました。
でも価値観の違いと言ったらそれで終わりなんだけど、趣味があそこまで完全に合致していても上手くいかないなら、一体どんな価値観が合致していればいいんだろう。まぁそれも人それぞれ違うだろうしタイミングによっても違うだろうから、恋愛って難しい。
価値観の違いからの悲恋で終わるなら、サブカル系に特化しているだけでまぁよくあるその辺の恋愛映画と同じだなとやや斜に構えていたのですが、結婚式の後のファミレスのシーンで一気に涙腺崩壊しました。
家族になればやり直せるというわけのわからない麦の謎理論に絹がなあなあと流されかけたときに、かつて2人が座っていた席で繰り広げられるかつて2人がしていたような初々しいやりとり…、を見て大号泣する絹…。かつて2人が座っていた席に座れなかったように、長い年月を一緒に過ごしてすれ違いを積み重ねてきた今の2人が、あの席に座っていた当時のように戻れることはないということを悟った涙だと感じました。
客観的に見れば大学時代の恋人と就職後に上手く行かなくなるっていう話はありふれているんだけれども、そのありふれた話をここまで優しく残酷でドラマティックな別れにできたのは、別れてなお意気投合するくらい趣味嗜好の合致する個性を持った2人だったからこそだなと思いました。
でも個人的な好みの問題で最後だけすごく気に食わなくて、最後にお互い背を向けながら手をひらひらさせるシーンだけは本当に蛇足だと思いました。個人的にそれまでの良さを全て台無しにする蛇足シーンランキング映画版5本の指に入るレベルの蛇足。
お互いに新しい恋人がいるのは別にいい。映画が1本作れちゃうような恋愛が終わってもまた別の恋愛をする、それはよくあることだから。そしてお互いの存在は認知しつつも目も合わせず声もかけずに去っていくのも別にいい。かつての恋人とはそういうものだから。だからそうやって、2人が座っていたファミレスの席で2人がしていたような話をする他の若い男女がいたように、2人にとって特別ではあるけれども世の中にはありふれている恋愛として描き切ってほしかったです。
でも最後にお互いが手をひらひらさせるのが、主演2人の演技力をもってしても明らかに嘘くさくて、その演出のせいで興覚めしてしまいました。別れてもお互いの健闘を祈ってます的な?
作中で花束に関する言及がなかったのでこの作品の意図する「花束みたいな」が何を指すのか明言できないけど、個人的に「花束」から連想するような「触るとすぐ崩れてしまいそうな儚い」恋愛として終わっていない、むしろ花を突っ突きまわしたり雑に扱ってるような印象になってしまったのが個人的にマイナスでした。
まぁ主人公2人の性格的に花束をプリザーブドフラワーなりドライフラワーなりにして大切に保管して時々見返してセンチメンタルになるタイプではないだろうから、2人らしいと言えばらしいのかな。
でもこれだけ趣味嗜好の合う相手と恋愛できたこと自体が花束みたいなプレゼントだ、的な解釈ならまだ納得できるかもしれません。
サブカル系真っ只中にいた大学生くらいの頃に見ていたらかけがえのない映画になっていたかもしれないなと思いましたが、社会人にならないと2人のすれ違いをリアルには感じられなかっただろうから、今観れてよかったとも思います。
肝心のACTもけっこうしっかり使われていて嬉しかったです。ぽりんちゃんが演者として出ていたのにびっくりしました。