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ダーティハリーのrollinのレビュー・感想・評価

ダーティハリー(1971年製作の映画)
4.4
マグナム。
男って奴らはその響きだけでタフになれる、仕方ねぇ生き物なの。
劇場型殺人鬼VS激情型殺人鬼 in SF。なぜさっさとぶッ殺さないんだ?

まず先に画面へ登場するのが、さそり座の男・美川憲一a.k.a.スコーピオだということ(彼が覗くscopeとscorpioが掛かってる)。この主役が映画に遅刻するというスタイルは、ハードボイルドに於いてめちゃくちゃ重要。

イーストウッドの鼻とサングラスの形状が描く冷淡なエッジ。サンフランシスコの青空と摩天楼へ切り込む剃刀のようなハリーのビジュアルに、僕なんかは「あ、この人アンチヒーローだな!」とすぐに気づきましたよ✌︎(常識)

ラロ・シフリンの茹だるような音楽は、’70sUSAの都会の昼下がり感、お昼食べた後の働きたくないなぁ‥感を見事に表現しているし(適当)、当時のサンフランシスコの街並み自体がプロダクションデザインとして大いに機能していることは言うまでもありまへん。クレジットの色が黄色というのも大事。

さてさて開始10分。
早くも映画史に残る最高のシーケンスが始まるんだぜ。
ウィンチェスターM12を撃って来る強盗犯や、突進して来る車に対し、一切怯まずS&W M29で冷静に獲物をハントしていくハリー。逃走車に窓からダイレクト乗車する犯人や、車の衝突で噴水する消火栓等、一連のアクションの力学的な気持ち良さったらない。
さらに重要なのは、ハリーがホットドッグの一口も飲み込まないうちにこれらの狩猟を終えてしまったということ。ハリーが何発撃ったか数えるなんて野暮な真似はしちゃいけねぇ。

そして息のある強盗犯に吐きかける伝説の啖呵。許されざる構図!
困ったことに、本作はこの時点で天文学的スケールの満点を叩き出してしまい、以降いかなる採点方式もこの映画の指標として意味は成さなくなるのでがんす。

ヘリから狙撃犯に声を掛けるという警察の歴史的失態。おっぱい観察による気持ちの乱れによってスコーピオを逃してしまうハリー。
異様に真っ暗な夜のサンフランシスコでの公衆電話〜スタジアムツアーはまるっきりホラー演出であるし、またはハリーの迷い込んだ精神世界のよう。
スコーピオはおろか、ハリーの過去でさえもほとんど説明しない徹底されたスタイル。終始ギンギンなハリーのイチモツに対し、女性や子供(と爺ちゃん)しか襲えないスコーピオのムスコが7.7mm二式テラ銃からワルサーP38まで小型化していくのが面白い。(ちなみに言うまでもなくこの映画のヒロインはスコーピオです)
スクールバスがゴールデンゲートブリッジ手前を通過する場面でバイソンの群れが映るのも西部の名残り。陸橋の上のハリーの最早コミック的なカッコよさとかね。

最後になりましたが、スコーピオに「あれま!スゴく‥大きいです♡」と言わしめたレジェンド、S&W M29 6.5inch “.44マグナム”と、映画に最大の敬意を込めて、不遜ながらこの点数にさせて頂いた次第でございます。
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