よねっきー

カモン カモンのよねっきーのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.8
人のことは分からない。相手のことを全部分かってるなんて思ってるとしたら、それこそ傲慢だ。だけどおれらは「分かりたい」と伝えることならできる。言葉でも、それがこっ恥ずかしかったら態度でも。

音響が凝ってんのが良い。作為的な手触りのなかにデジタルな感覚が残っていて、没入感を良い具合に削いでくれる。ゆったりして心地いいけど、集中してないと汲み取りきれないタイプの映画だ。

カメラで人を撮るとき、おれはいつも「この人のことは分かんないな」と身に染みて理解する感覚があるんだけど、それはきっとジョニーもそうだしマイク・ミルズもそうだったんじゃないだろうか。撮影や録音というのは「相手を分かっていく過程」でありながら「相手の全ては分かり得ないと知る過程」でもあったりする。その作業を何千回何万回と繰り返して、おれらは人との距離感をうっすらと掴んでいく。

僕は忘れないけど、君はきっと忘れる。なんて言ってる僕も、いつ忘れるか分かったもんじゃない。だからフィルムに、テープに残すのだ。その危うい永遠性に、記憶を託して。この映画は、きっといつまでもみんなのことをよく覚えてると思うよ。
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