竜平

カモン カモンの竜平のレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.2
ホアキン・フェニックス主演。ラジオジャーナリストの男がひょんなことから妹の息子の面倒を数日間見ることに、そこから始まる大人と子供の交流、対話。「親子」を題材に描くヒューマンドラマ。

「親子」が題材と言いつつもメインとなるのは伯父と甥っ子という二人。で、大人と子供が心を通わしていくみたいなのってわりとよくある話だと思うし、「互いを知らない者同士がひょんなことから」という設定も本当によくあると思うんだけど、今作にあるのが他のそれらとは少し異なる、得も言われぬ現実味や深みというもの。和やかな作風も相まって雰囲気も良き、てか好み。時折挿し込まれる主人公の仕事としてインタビューシーン、それがあるからかちょっぴりドキュメンタリーのようなタッチにも感じる。好奇心旺盛な9歳の少年ジェシー、演じる子役の立ち振る舞いなんかもリアリティーに溢れてるんだけども、ここで見えるのがそんな子どもから見た親、もっと言えば母親の存在、そして子どもの目線での「本音」というもの。子育ての中にあるなんとも形容し難い関係性を映し出してるあたり非常に印象的だなと。ホアキン・フェニックス演じる主人公ジョニーが少年相手に四苦八苦する様なんかは前半こそ微笑ましく映ったりする、けど振り回されつつ接しようとする中で自身の感情やらも出てきてしまうし、子どもと向き合うことの難しさ、向き合っている自分との葛藤なども見えてくるしで、これもやっぱりリアル。やがて本来の親である妹の苦労というのも見えてきたり。愛があることは大前提として、親としての責任と、また厳しさやらも必要なんだろうなと、俺自身に子どもはいないし本当のところはもちろんわからないんだけどね、双方の目線でいろいろ考えさせられたというところ。

メインの少年のみならず「子どもの目線」というのが今作にはやっぱり色濃くあって、これはインタビューのシーンを強調してるあたりにも出てると思う。それぞれの将来とか人生のこと、更に暮らしてる街や社会のことまで、なんとも多角的でおもしろい。人にとっての切り離せない孤独感と、それとは逆に交われることの素晴らしさと、両方を写し出す感じ、いやそもそもこれって表裏一体なのかも、なんて。総じて人間讃歌のようにも感じれる素敵な一本、良作。時間を置いてまた見ようと思う。
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