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ミッドナイトスワンのShinMakitaのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
2.2
トランスジェンダーの凪沙は、新宿のニューハーフバーで働いている。ある日、実母にネグレクトされた女子中学生・一果を預かることになった。実家にも「オカマ」であることを秘密にしている凪沙にとっては、一果の存在はかなり迷惑。しかも一果は、無口で愛想もなく、おまけに凶暴だった。ウンザリする凪沙だったが、やがて一果の秘められた才能に気づき、それを伸ばしてやろうと決意する。


「ミッドナイトスワン」を観た。

自粛明けの邦画は、ちょっとどうかしている。森崎ウィンがジャック・ニコルソンに変異する映画を観たと思ったら、今度は草彅剛がジーナ・ローランズに変身する映画ですよ。

以下、ネタバレスワン。


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模倣とステレオタイプ描写が目立ち、草彅剛のぎこちないトランスジェンダー演技も気にはなるが、何故だか胸を打つ作品。外見的に美しくなること・本物の女性になること・本当の母になること。主人公がこれら叶わぬ夢を少女に託して自己を犠牲にしようとする、その美しさ・崇高さには、いやでも感動しちまうんですよ。

ナタリー・ポートマンの「ブラック・スワン」とカサベテスの「グロリア」が間違いなく参考映画。草彅くんが着るベージュのトレンチコート、一果を迎える新宿駅で見せる冷たい態度、そしてタバコ。どうしても「グロリア」を思い出しますよ。
「ブラック・スワン」は、一果がクライマックスで舞う白鳥の湖のカメラワーク。あの浮遊感はブラック・スワンに似てませんでした?そして一果とリンの同性愛的関係性やリンの末路もブラック・スワン的です。
ニューハーフ仲間や、一果の母親の(およびその情夫が鳶という)描き方が類型的なのもいかにも邦画っぽくてシラケるポイント。しかしそんなことはどうでもよくなるほどに一果のバレエが素晴らしく、目を奪われました。傑作と呼べるほどではないものの、心に響く映画でした。観る価値あり。
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