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ミッドナイトスワンのHisySTのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.5
鑑賞後、電車を降りてから、後から後から涙があふれてきた。映画館では泣かなかったのに、胸の奥に澱のように切ない痛みが溜まっていた。我々が歩いているのはおそらく舗装された大きな道路で、凪紗たちがいるのは石塊だらけのけもの道のようなところで、そもそもスタート地点から同じではないのだ、と思いながら月夜の道を歩いて帰った。
「何で私だけ」こんな思いで「何で私だけ」こんな風ににしか生きていくことができないのか、という凪紗のヒリヒリとした痛みが「魂の尊厳」を叫んでいた。「世界で一番美しいラブストーリー」などという安易で陳腐な言葉で表現できる作品ではない。草彅剛しか凪紗の壮絶な人生を生きることはできなかっただろう。
バレエの美しいシルエットが観るものを絶望から救ってくれ、テーマ曲のピアノの旋律が作品を上質なものに仕上げている。
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