福助

ミッドナイトスワンの福助のレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
2.8
※この映画を高評価にした方々にとっては気分を害する表現になっているかもしれませんので閉じていただい方がよろしいかも。異論はもちろんお受けいたします。
そしていつも以上にクソ長いレビュー&所感です。


草彅剛のキャリアハイと言われる演技や、丹念に取材したと思われるLGBT+のリアリティある描写、貧困や毒親といった社会問題を絡めた作品でした。
めちゃめちゃ評価高いようですし、大絶賛する方々もSNSでは見受けられるので、そういった意見が大半なので観る価値あると思います、
ただ、私の感想としては

「LGBTミーツ万引き家族!ダンサーインザダークの香りを添えて。」

みたいな感じ。

娯楽映画としてはまあまあ陳腐なストーリーと描写やったなあって。
娯楽だからという感覚で我々マジョリティがマイノリティの不幸を養分にしてるみたいに思えてきて不快さで気分が滅入りました。
当事者の方々が観て満足しているのならそれはそれでいいかと思うんだけど、なんか違う気もします。
その不快さが社会的弱者やマイノリティの現実として起こっている事だし、目を背けるな!と怒られそうなのですが、いやいや、そんな事わかっとるわい!ワシがイライラしてるのは、娯楽映画というなら徹底的に楽しませるか慰めろや!ってことなのです。

設定と展開が無理矢理にでも凪沙を不幸にさせますモードになってるやん!そりゃお金は大事やし無いと困るけどそもそも凪沙のおかんが援助するって言うてたやん!パレエの月謝バカにならんけど免除してもらえるならそれに乗っかればええやん!バレエの先生もそこら辺気持ちを汲んであげられるやん!海外オペのリスクあるかもしれんけど、いくらなんでもあれはやり過ぎやん!そのくせ感肝心なクライマックスはしょーもないポエムシーンでお茶濁してるやん!海のシーンなんて、口ポカーンでしたよ。うわ、しょーもなっ!って声出そうになりました。
無償の愛を与えたかった相手にあんな終わり方させたらあかんでしょ。って。

要は、リアリティを追及してるのだろうけど演出が前時代的でありきたりなお涙頂戴っぽくて話に入り込めなかったです。

出演されている役者さん達はめちゃめちゃ良かったです。草彅君のリアリティがスゴい。ショーパブにああいう雰囲気のお姉さんいるいる!
氷川あさみの演じるヤンキー母ちゃんも、私の同級生が見た目あのまんまだったので笑ってしまいました(中身はめちゃめちゃ優しい母親してます)
一果役の娘はバレエ素晴らしかったな。年末にボレロ観るくらいの鑑賞レベルなのですが、すごく引き込まれました。
一果の友達も良かったんですが、一果にとって重要な要素として存在してるはずなのに、関係性を掘り下げられずに、何やそれ。みたいになってしまって残念です。それいる?インパクト残したかっただけ?みたいな。

凪沙は無償の愛を一果に与えたかった。与える事で自分の母性を通し女性としての存在意義を感じたかったのだろうけど、結局は一果の為なのか、自分の為なのか、どちらかというと、自分が満足したいが為なのかと思わせる行動に思えました。まぁ、これは捉え方の問題なのかも。

私、10代の頃に4年くらいニューハーフと言われてる方々のショーパブでバイトしてたんですよ。当時のLGBTはもっと日陰の存在でして、バイトしてるってだけで周りからは中傷されたりしてました。でも、楽しかったし働いてた姉さん達も飯食わせてもらったり優しかった。たまに悲しい話も聞かされてたけど、バイタリティ溢れる生き方に勇気を貰ってたんですよね。
それでも、私がマイノリティの方々の内面を理解する事は難しいと思いました。当事者じゃないから。迫害を受けたり、家族から拒絶されたり、歩いてるだけで指をさされることは無かったから。だから、よく一緒に笑って騒いで踊ってた日々を思い返して、そんなに悪いことばかりじゃないと思いたいだけなのかもしれません。
だからこそ、この映画を観てLGBTを理解したとか、可哀想な生き方なんだと思う輩が出てこないか不安になるんですよ。
最近流行ってるよね、LGBT僕も勉強してるんですよっていう輩とは違うと思いたいけど、当事者じゃないし理解する事は難しいですよ。だから認めるだけでもいいじゃないかって思うけど、この映画の監督が言うところの娯楽作品って勘違いしてしまう輩に影響を与えてしまう事なんじゃないの?って思ってしまいます。
フィルマークスで観ると高評価ですし、自分の感覚は今の時代にフィットしてないのかもしれませんけどね。
福助

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