永遠の寂しんぼ

ファーストラヴの永遠の寂しんぼのレビュー・感想・評価

ファーストラヴ(2021年製作の映画)
3.5
『男性描写が偏り過ぎてて逆差別になってない?』

原作未読。
役者陣の演技は総じて素晴らしかった。北川景子さんなんかここ最近酷い映画ばっかり出てたから改めて彼女の演技の幅の広さを感じられて良かった。木村佳乃さんの酷い毒親っぷりの演技も凄かった。(ていうか木村さん去年のあの映画で北川さんと同じような役で共演したばっかりじゃん) 容疑者役の芳根京子も勿論良かったけど一番見事だと思ったのは彼女の幼少期を演じた子役さん(お名前分かりません・・・)です。あんな難しい役をよく演じ切ったなと。

ただ映画自体の印象は微妙で各人物の物語があんまり噛みあっていないように見えた。物語中盤で北川さん演じる由紀の過去や容疑者の環菜とも通じる男性への恐怖をじっくり描き過ぎていて、終盤の裁判の内容が薄くなっていたと思った。精神を病んでまともに話もできなかった環菜が由紀とのやり取りだけであそこまでしっかり裁判で受け答えできる状態まで回復する説得力が足りないと思う。

由紀が心理士として環菜の心を紐解いていく展開自体はいいけれど、タッグを組んだ中村倫也演じる弁護士が全然役にたっていないのも気になった。あんなんで裁判になって急にビシバシ環菜を擁護してても信頼できないと思う。彼と由紀の過去と現在の関係性が変化していくのもなんかしっくり来ない。昔はけっこうなクズだった彼が『昔は色々あったけど今はいい関係になれたね』みたいな雰囲気出されても納得できないよ。

この映画で一番気になった、正直不快だったのは登場する男性の描かれ方。男性による女性の性的搾取は現実でも大きく問題視されているし、訴えたいことはわかる。ただ、その表現方法がどうなんだとは思った。環菜や由紀の父親のように1人か2人の酷い男を描くならまだ許容できるが、今作ではそれ以外に何人も何人も女性の体や心を蔑ろにする男が出てきて正直うんざりした。『何?男ってみんなそうだと思ってるの?』って感じで。

男性の描き方が偏っていると感じるのはもちろん僕が男だからこその感想だし今作は男女で賛否が少なからず割れる気がする。メッセージ性や描写に反感を持ってしまったが決して悪い映画ではないし、観た後に色々考えさせられている時点で作り手の狙い通りなんだと思う。