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由宇子の天秤のひでGのレビュー・感想・評価

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
3.8
町山さんが公開前にラジオで熱く語っていた時、僕は山奥に住んでいたので、いつかレンタルで観たいなって思っていたのが、今回配信に入っていたので喜び勇んで視聴しました。

配信や公開作でも、最近僕が選んだ日本映画は、殆ど優良作品!その後のレビューには、
お決まりになった「日本映画凄い!」の言葉を使っていました。
ただ、本作は思ったようには、のめり込めなかった。
衝撃作であり、二つの事件の中で揺れる由宇子の葛藤と緊迫感は凄いものがあり、最後まで「どうなるんだろう」と気を張って観ることができた。

オリジナル脚本で、本作が劇映画2作目の春本雄二郎さん、本作のプロデューサとして、資金やスタッフ集めに奔走して完成・公開に漕ぎ着けたとのこと。
そのように新しい才能が監督が広い裾野から現れ、世界的にも評価されることはとても素晴らしい。

ただ、僕はこの作品、少し気持ちが乗れなかった部分もあった。
瀧内公美演じるフリーディレクターの由宇子は、女子高生のいじめ自殺事件から徐々に学校側、マスコミ側、ネットでの誹謗中傷など、広がっていく問題を遺された遺族の証言などから掘り下げていこうとしている。

それに対して由宇子の上司やテレビ局は、
シンプルな内容にしろ!
身内のマスコミを叩いてどうする!
と内容の修正、縮小を求めてくる。

しかし、由宇子はめげずに当事者や家族たちへのインタビューを積み重ねていく。

身内を庇うや問題を敢えて矮小化する手口は僕らも何度も見てきたこと、
それに彼女がどう立ち向かうのかを見続けてみたかった。
ただし、現実のマスコミは映画で語られている以上に劣化が激しく、由宇子が企画さえ持ち込める以前に、何かを伝えるという気概も能力もかく情報ばかりしか流さない。

本作はタイトルの示すようにもう片方の天秤が焦点になってくる。
そして、そこが僕がもう一つ乗れなかった点でもある。

由宇子の父が長年営んできた学習塾。彼女も時より手伝っていた、という公式の粗筋だが、見ていると完全にダブルワーク。正直、ディレクターと塾講師(手伝いでも)の二刀流は無理じゃないかな、
まして、問題を抱えた子に対してあんなに親身になってやって行くことが物理的にできるのかなって(彼女が大変だって描写はあったけど)
それから、父が起こした大きな問題、、、
光石研さんのあの感じとそれとが僕はどうしても結び付かず、映画の作為性をより感じてしまった。
あの父親なら、いくら一時の感情だとしても、その後どうなるのからの分別はできたはず、なぜに?って、由宇子と同様に、私も思ってしまった、、

あれがないと天秤にならず、自分がカメラを通して訴えてきたことが今度は自身に返ってくるという作品の肝が無くなってしまうのだろうが、何かモヤモヤ感が残ってしまったのも事実だ。

かなり絶望的な終わり方でその分余韻は強く残る作品ではある。
瀧内公美は熱演!
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