九月

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!の九月のレビュー・感想・評価

5.0
とっても良かった。

正直ミュージカル映画は好みではないと思っていてあまり観てこなかったものの、『tick, tick…BOOM!:チック、チック…ブーン!』すごく好きだった。
30歳の誕生日を目前にした主人公のジョナサン・ラーソン。未だ何も成し遂げていない中、周りの友人たちは、妻子を持ったりお腹が出てきたり髪が薄くなったり…と着実に年齢を重ねていることを実感しながらも、夢を諦めきれずに追い続ける。

ジョナサン・ラーソンや『RENT』のことは知らなくて、ミュージカルの作曲家という、自分とは遠い存在ではあるけれども、主人公に共感できる部分がたくさんあった。また、夢を追い続けることだけではなく、他の選択肢も多く描かれていたのが良かった。
NYでミュージカル作家を目指す、恋人に就職を諦めてもらって一緒に暮らす、
恋人の夢を応援するためにNYから離れる、自分の夢は諦める、
ウェイターのアルバイトを続ける、辞める、
広告会社に勤める親友を頼って安定のために就職する…
ミュージカル作家になるというゴールありきではないところが、彼のような大きな夢を持っている訳でもない私が見ても共感できるようになっていた。

そして、主人公の周りの登場人物にもそれぞれ、その人の夢や人生、生活があるということを感じられるのも良かった。
主人公の友人や恋人が彼に振り回されて、関係が悪くなったまま離れてしまったり、有耶無耶にされて一緒になったりする展開は嫌だな…なんて心配していたのも杞憂だった。
恋人のスーザンはダンサーで、NYから遠く離れた地でダンスを教える講師として声がかかっている。もちろんジョナサンのことは応援したいものの、いつまで応援できるのか…という葛藤がある様子。
幼馴染のマイケルは役者になるという昔からの夢を諦め、広告代理店に就職。そこで成功を収め、駐車係付きのタワーマンションに住むなど裕福な暮らしを送っている。彼はゲイで、当時エイズの脅威が襲いかかっていたアメリカでは同性愛者にその行為をやめさせるべきという批判の声も。
時計の針の音が鳴り響き、人生や時間には限りがあるということを改めて思い知らされる。

アンドリュー・ガーフィールドの歌のうまさにびっくり。ヴァネッサ・ハジェンズとの掛け合いが最高に楽しかった。
何かに思い悩んだ時や、次の誕生日の前にまた観たい。
九月

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