ごろちん

眠る虫のごろちんのレビュー・感想・評価

眠る虫(2019年製作の映画)
4.2
現実と幻想のグラデーション。現実の世界の中に幻想が溶け込んだ印象。この映画の世界で「死」は終わりではなく、あくまで「生」の延長線上の出来事として描かれている。

場所に魂が宿るという考えがある。思い出の場所に行くと他の人には見えていなくても自分にはその時の情景や故人が目に浮かんで来たり。この作品では人の記憶を肯定的に捉えていて、たとえその場所に目に見える形で存在しなくなっても、心と場所が結び付くことで魂は生き続ける、そう訴えているように感じた。

同じような魂を描いた映画はアピチャッポンの作品があるけど、この作品の方がずっと分かりやすい。変なエアロビも出てこないし。たとえピンと来なくてもラストの音楽が全て補完してくれる。個人的には何となく『となりのトトロ』を観たようなほんわかとした気分になった。

人によって思想は様々。死生観も人それぞれ。本や映画は既存の視野をさらに広げてくれる。この映画もそのひとつ。
いつか大切な人が亡くなったときにふとこの映画のことを思い出すことが出来たらいいなぁ。
ごろちん

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